「日本住血吸虫症」根絶の影で、姿を消した小さな貝たち


かつての日本における流行地では多くの被害が生じました。幼生がいる川や用水路に入らなければ感染はしませんが、水田で作業する農家が感染を避けるのは困難です。感染対策としてミヤイリガイの撲滅が目指されました。ヒトからヒトへ直接は伝染しませんので、ミヤイリガイがいなくなれば日本住血吸虫もいなくなります。

 吸虫の発見が1904年、ミヤイリガイの関与が判明したのが1913年。長らく対策が続けられましたが、水路のコンクリート化や農薬の使用などの努力によって、1978年以降は新規感染者の報告がなくなり、1996年に日本での日本住血吸虫病流行の終息が宣言されました。関係者の多大な努力によって多くの人が病気で苦しむことがなくなった一方で、各地のミヤイリガイの個体群は駆除され、日本では一部地域に残るのみとなり、いまや絶滅危惧種です。一つの病気を根絶した先人たちの努力に感謝すると同時に、人命を救うためとはいえ人間の都合でほぼ絶滅に追い込まれた小さな貝についても忘れてはいけません。

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