10月に公表されたIMF(国際通貨基金)の世界経済見通しによると、2022年の1人あたりGDPで、台湾が44821ドル(世界第24位)となり、日本の42347ドル(27位)を越えた。

 台湾と韓国の経済成長率は高いので、1人あたりGDPで日本を抜くのは、時間の問題だと考えられていた。韓国の値がやや高かったので、韓国が先に日本を抜くと考えられていたのだが、実際には台湾が先になった。

 日本が韓国に抜かれるのも、時間の問題だ。多分、今年中か来年中にそれが起きるだろう。

 これまでも、シンガポールと香港の1人あたりGDPは、日本よりかなり高かった(2022年で、シンガポールは世界第5位、99935ドル、香港は第16位、62015ドル)。ただし、人口は数百万人だ(シンガポールは569万人、香港は748万人)。つまり、都市国家であって、日本とは簡単に比較できない面がある。

 それに対して、台湾は人口が日本より少ないとはいえ、数千万人のオーダーだ(2357万人)。

 この規模の人口のアジアの国・地域の1人あたりGDPが日本を抜くのは、初めてのことだ。

 前述のように韓国、台湾の成長率は日本よりかなり高いので、何もしなければ、日本が挽回するのは難しい。むしろ、差が拡大していくだろう。

 日本は、もはやアジアで最も豊かな国とは言えない。その意味で、今回の統計が示す結果は、歴史的な意味を持っている。

IMFは、世界の40の国・地域を「先進国」としている。

 アベノミクス・異次元金融緩和が始まる前の2012年には、日本はこの中で第13位だった。いまは第27位だから、この10年間に大きく順位を落としたことになる。いま日本は、先進国のグループから転落しかねない状態に陥っている。

 アベノミクス・異次元金融緩和が何をもたらしたかを、これほどはっきりと示しているものはない。

 2012年、日本より上位にあったのは、ヨーロッパの小国あるいは、北欧諸国が中心だった。

 G7諸国中で見ると、カナダ、アメリカ、日本の順だった。つまり、日本はG7の中で、上位グループにいた。1人あたりGDPで、アメリカと日本は、ほとんど差がなかった(アメリカ51736ドルに対して、日本49175ドル)。

 しかし、この10年間に、日本は、1人あたりGDPで英独仏に抜かれた。いま、G7で日本より下位にあるのは、イタリア(第32位、38775ドル)だけだ。だから、いまや日本は、G7の最下位グループにいる。

 そして、アメリカの1人あたりGDP(第8位89546ドル)は、日本の2.1倍になった。

 これほど大きな変化が、この10年の間に起きたのだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/9f2aaacf5f4c34cd2ce56b026ca86cf55106e21a