イスラム教徒のヒジャブをかぶってアダルト動画に出演し、世界的なポルノスターになったミア・ハリファが、業界の搾取構造を暴露。1本あたり10万円ほどしか報酬をもらっていなかったという。いまだファンが多い“伝説の作品”から逃れられないハリファは「過去を消したい」と訴える。
2014年の暮れ、マイアミのとある貸家にポルノ映画の撮影クルーが集まった。カメラマンが焦点を合わせたのは、ヒジャブをかぶったミア・ハリファ。その後のポルノサイト界を長く席巻することになる“伝説の作品”の撮影が始まった瞬間だった。

一躍ポルノスターの座にのし上がったハリファは、世界で最も検索されるポルノ女優になり、彼女の人生は一変した。しかし、その人気にもかかわらず、彼女が得た報酬は驚くほど安かった。

ハリファは2019年8月、ツイッターで業界の賃金について明かし、世間をざわつかせた。

「皆さんは、私がポルノで大金を稼いだと思っているでしょうが、まったく違います。私が2015年の初めにポルノ業界を去るまでの3ヵ月間で出演したアダルト動画は約12本です。それで得た報酬は計1万2000ドルほどでした。その後、動画が再利用されても私の財布には1セントも入っていません」

ハリファは引退後の現在もポルノサイトに巨額の利益をもたらすトップスターであるのに、動画の再利用に対する著作権使用料が彼女にまったく支払われていないというのは、一体どういうことなのか?

ハリファのツイートは、数十億ドル規模の富を生んでいるポルノ産業の闇を垣間見せた。業界は過去の動画作品を繰り返し視聴者に提供し続けることで、巨額の収益を搾取しているのだ。また、この再利用のせいで、引退したポルノ女優たちは過去から逃げられないようになっている。

アダルトサイト大手「ポルノハブ」の俳優検索ランキングで、ハリファは2位となっている。さらに、彼女の作品の視聴回数は7億8400万回と驚異的だ。単純計算すると、アメリカの全人口が1人当たり2回以上視聴していることになる。

しかし、ハリファはポルノハブからもほかの同業サイトからも著作権使用料はまったく受け取っていないと、本紙ワシントン・ポストに語った。

彼女がデビュー後、早々にポルノの仕事をやめたのは、世界中の注目の的となり、街を歩けばファンに好奇の目で見られることに耐えられなかったからだという。ヒジャブをかぶってポルノ出演したことで、テロ組織ISIS(自称「イスラム国」)から殺害予告も受けたが、それは引退理由ではないと話す。

「ISISが怖かったわけではありません。とにかく恥ずかしい気持ちでいっぱいでした」

https://courrier.jp/news/archives/175117/#paywall_anchor_175117