国鉄分割民営化から30年以上が経ち、社会は大きく様変わりし、あらゆる面において新たな枠組みが必要とされている。総じていえるのは「日本の鉄道は縮小傾向にある」ということだ。赤字ローカル線の廃線や需要の減少が相次いで報じられている。
国鉄分割民営化が行なわれた1987(昭和62)年当時、日本の人口は右肩上がりだったが、少子高齢化により、現在は減少している。さらに、都市部への人口集中、地方の過疎化も問題となっている。その結果、地方鉄道の収益性は悪化の一途をたどっている。
新型コロナ禍により、都市部や新幹線の収益が著しく減少し、日本の鉄道会社の収益構造にほころびが生じている。
これまでは都市部の路線や新幹線の収益で、地方ローカル線の赤字を穴埋めしてきた。収益性の低い路線を、高い路線で補塡するという「内部補助」の考え方である。
しかし、この「内部補助」には、批判も多い。
国土交通省で開催された、地方ローカル線の今後のあり方を考える「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」では、「満員電車で通勤する乗客の犠牲の上に、地方ローカル線は成り立っている」と、否定的な意見があったという。
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国鉄分割民営化当時にくらべ、乗用車の保有台数は全国平均で2倍以上、地方では約2.5倍に増加している。
地方では一家に1台ではなく、1人1台が当たり前の時代になった。その結果、鉄道をはじめとする公共交通の必要性が大きく下がったわけだ。
クルマの普及は、まちづくりにも大きな影響を及ぼした。クルマ移動が前提の社会となり、広大な駐車場を整備しやすい郊外が発展。巨大なショッピングモールやロードサイド店舗が激増した。
その一方、駅前は寂れ、いわゆる“シャッター通り”と呼ばれる商店街が生み出されることとなった。その結果、駅の魅力が失われ、鉄道の乗車機会がますます減少してしまったのだ。
そして、高速道路網の拡大により、クルマの利便性にさらに拍車がかかった。高速道路の総延長距離は国鉄分割民営化時の3910kmから9050kmと倍以上になっており、クルマの普及を大きく後押しした。
高速道路網の拡大は高速バスの運行にも大きな影響を及ぼした。国鉄分割民営化前の1985(昭和60)年度から2018(平成30)年度の間に、高速バスの運行系統数は249本から5132本と、約21倍にまでふくれ上がった。
https://president.jp/articles/-/63189?page=1