世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治の関係をめぐっては、米国でも、保守政党である共和党の有力者らが関連団体の会合に出席したり、メッセージを寄せたりしてきた。特にトランプ前大統領はたびたび会合にビデオメッセージを寄せ、感謝の言葉などを重ねている。教団側のさまざまな支援や、党の支持基盤であるキリスト教右派との連携などが背景にあるとみられる。

「世界平和のために素晴らしい取り組みをされている韓鶴子(ハンハクチャ)総裁に感謝します。彼女は素晴らしい女性です」

トランプ氏は12日、旧統一教会の関連団体「天宙平和連合(UPF)」がソウルで開いた大規模集会にビデオメッセージを送り、こう語った。昨年9月にUPFが開いた「希望への集会」でもビデオメッセージによる講演をしている。

12日の集会には、ポンペオ前国務長官やギングリッチ元下院議長も出席した。UPFのホームページによると、近年開かれた他の集会では、ペンス前副大統領やチェイニー元副大統領らも講演したという。共和党内で保守派の重鎮として知られる2人だ。

元信者で心理学者のスティーブン・ハッサン博士によると、旧統一教会は米国でメディア、ビジネス、政治などの分野でさまざまな団体を抱えており、「宗教的な部分だけで考えるのは間違いだ」という。

日本では高額な献金要求や霊感商法が批判を浴びているが、1970年代半ばに信者だったハッサン氏は「米国ではそうした活動をしていたとは承知していない」と振り返る。ワシントン・ポスト紙は旧統一教会の元日本幹部の話として、日本で集めた巨額の資金を70年代半ばから80年代半ばにかけて米国に持ち込んでいたと報じている。

米政界との接点として挙げられるのが、首都ワシントンなどで発行されている日刊紙「ワシントン・タイムズ」だ。旧統一教会の創立者である文鮮明氏が82年に創刊した。140年を超える歴史を持つワシントン・ポストがややリベラルな論調であるのとは対照的に、保守系メディアの中でも強硬派だ。

部数はポスト紙より大幅に少ないが、共和党議員の多くが愛読しているとされ、保守派への影響力がある。ハッサン氏は「共和党の大統領はみなワシントン・タイムズを掲げて、『自分の好きな新聞だ』と言って写真を撮っている」と語る。

一方、ポスト紙によると、旧統一教会や関連団体は政治家らに集会で演説してもらうために多額の報酬を支払ってきた。有名で尊敬を集める人物と結びつくことで信用を得る活動の一つだという。

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https://mainichi.jp/articles/20220818/k00/00m/030/207000c