スーパーが予告なく閉店、独自の電子マネー戻らず…客は憤慨「まるで詐欺だ」
大阪、京都で4店舗を運営していたスーパーチェーンが10月、予告なく閉店し、店が独自に導入していた電子マネーの残高が使えない事態となっている。会社は破産手続きを進めており、残高が返還されるめどは立っていない。「買い物難民」も発生し、地域に混乱が広がっている。
「一度も使ってない」
閉店したのは、京都府八幡市に本社を置く「ツジトミ」。民間調査会社「帝国データバンク」によると、1982年設立で、同府京田辺市と京都市、大阪府茨木市、交野市にスーパー4店舗を展開していた。ピーク時の2000年12月期の売り上げは約52億円に上ったが、他社との価格競争で経営が悪化。10月に事業停止し、現在破産手続きを進めている。負債総額は11億8000万円。
4店舗のうち京田辺店では、独自の電子マネーを導入していた。店が発行するカードに事前に入金し、商品を購入する際に使える仕組みだったが、閉店で客はカードを使えなくなった。
客への予告はなく、閉店後、店のシャッターに「事業の継続が不可能な状況になり、ご迷惑をおかけしおわびします」と貼り紙が掲示されただけだ。
9月末に1万円を入金したばかりだった50歳代の女性は「一度も使っていない。まるで詐欺だ」と憤る。
電子マネーの利用者保護を定める資金決済法では、電子マネーの発行事業者に未使用残高が1000万円を超える場合は財務局に届け出て、残高の半分を法務局に供託することを義務づけている。事業者が破綻した場合、そこから利用者に返還するためだ。
しかし、同社の代理人を務める稲田正毅弁護士(大阪弁護士会)によると、ツジトミの未使用残高は300万~400万円で届け出の対象外だった。カード利用者600~700人は、金融機関や取引先と同列の債権者という扱いになる。 破産手続きでは、債権者集会を開いて、会社の状況について債権者に説明し、残余財産から返還を進める。しかし、まだ集会開催のめどは立っておらず、稲田弁護士は「心苦しいが、カード利用者を他の債権者より優遇できない」と説明。カードの未使用残高が客に返還されるかは不透明だ。
買い物難民も
大阪府茨木市山手台は丘陵地にあるニュータウンで、約6200人が居住するが、閉店で地区にスーパーがなくなった。一番近いスーパーは数キロ離れており、地区の高齢化率は5割近く、徒歩や自転車で買い物に行くのは困難な住民も多い。住民でつくる街づくり協議会は急きょ業者に依頼し、10月9日から毎週日曜にトラックで食材などを運んでもらっている。しかし、吉田宏一会長(80)は「あまりにも突然の閉店で住民は混乱している。業者がいつまで来てくれるかわからない」と不安を口にした。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20221112-OYT1T50147/2/