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「湯船という小船で、人生の大海原へ」──風呂場から考える“おうち性教育”、山田ルイ53世の反省 #性のギモン
小4と3歳の娘をもつ髭男爵・山田ルイ53世。いま直面しているのが「性教育」である。「男親が性のことをあれこれ言うのは……」とのモヤモヤを抱えて今日まで過ごしてきたが、いったい何が“正解”なのか。「親子のお風呂問題」から「赤ちゃんのできかた」まで、産婦人科医の遠見才希子さんのもとを訪ね、改めて「親子の性教育」を考えた
親子のお風呂問題「いつまで一緒」が正解?
あれは長女(小4)が2~3歳の頃だったか。
「数字」とか「数える」といったことを覚え始めた時期で、親子3人(当時)で入浴した折は、「お風呂で温(あたた)まってるのは何人ですかー!?」などと簡単なクイズで盛り上がるのが恒例となっていた。
その日も、娘は「ふたりー!」と即答。浴槽には妻と長女、体を洗っているのは筆者だけだから、正解である。「お湯の中の子どもは何人ー?」と少し捻ってみても、「ひとりー!」と動じる様子はない。最後の仕上げだと、「じゃあ、“みーんな”で何人ですかー?」と叫んだとき、筆者の半生でも指折りの名場面が訪れた。
「かぞくーー!」
……何という素敵な不意打ち。てっきり、「3人ーー!」だと油断していたので、「せい……かい」と絞り出すのが精いっぱいでしたねぇ……と思い出に肩まで浸かりのぼせあがる筆者を、「家のお風呂って、子どもがホッと一息つける、プライバシーが守られる空間でもあるんです」と現実に引き戻したのは、産婦人科医の遠見才希子先生である。
2児のママで、講演や執筆を通し、性教育を幅広く発信している彼女。
「日本では家族との入浴を、コミュニケーションの場と考える向きが少なからずありますが……」と前置きし、「今年、東京都の公衆浴場(銭湯や温泉)の混浴年齢制限が10歳以上から7歳以上に引き下げられました。家のお風呂とは違うし、子どもの発達や親との関係性も絡んでくるので一概には言えませんが、参考にはなるでしょうか」と現代のテルマエ事情を整理してくれる。
“銭湯などで異性との入浴を恥ずかしいと感じ始めたのはいくつ”との子どもたちへのアンケートで、最も多かった回答は男女ともに“6歳”だったとも聞かされ、(6歳か……)と筆者が感慨深かったのは、長女と風呂を共にしなくなったのがちょうどそれくらいだったからだ。
(いつまで娘と一緒に入っていいのだろうか……)と当時は随分葛藤があったものだが、「そういうパパの声って結構あるんです!」と先生はニッコリ。
「ちなみに、(娘さんは)体は一人で洗っていますか?」と尋ねられたのを機に、長女のフロ・ソロデビューの顛末をつまびらかにすることにした。
いよいよ娘が親抜きで風呂に入るという日。(ちょっと冷めてない?)と釈然としなかったのは、湯加減ではなく、妻の態度である。
(足を滑らせぬか……)
(溺れたらどうしよう……)
と心配するあまり、天井裏で殿様の下知を待つくノ一さながら脱衣スペースで控えていた筆者。一方、妻はといえば、「○○ちゃん(長女)も『一人で入ってみたい!』って言ってたし!」と落ちつき払っていた。
この夫婦の温度差が、ずっと引っ掛かっていたんですと先生にぶつけると、「『一人で入る?』って、子どもの気持ちを聞くのは大事。自分で体を洗うことは、自分の体が自分のものだという認識を持つことなので。ママは幼児の頃から意識づけをしてきたのかもしれませんね」
と軍配はあっさり妻に上がる。
悔し紛れに口走った、「でも、もう少し一緒に風呂に入ってやってもよかったかなって」という往生際の悪い筆者の一言も、「これは“体の権利”に関わること。胸や股、お尻といったプライベートパーツは、基本的に、見るのも触るのも自分だけ。例えばお薬を塗るとき、家族とか先生が触るにしても、必ず子どもに理由を説明することが大切です」。
「子どもへの性暴力は、見知らぬ人より、身近な人から受ける場合が多いといわれています。それは家庭内も含めて。何か変だなって感じたら『嫌だ』と言っていいし、自分以外の人のプライベートパーツを勝手に触ったりじろじろ見たりすることがいけないんだよって、子どもに伝えるのも大事です」と圧倒的な文字数で手厚く埋葬していただいた。
ただ一つ、成仏し損ねたのは、性教育についてのモヤモヤ。
妻に2人の娘と筆者以外は女性ばかりの環境で、(男親が性のことをあれこれ言うのは……)との戸惑いや遠慮を拭い切れずにいたのである。