新海誠監督の新作アニメ映画「すずめの戸締まり」が公開された。災いの元となる「扉」を閉めていく少女の冒険を通し、閉塞感漂う日本が「次に進む場所」を見つけることを願う物語だ。

すれ違う男女を緻密で美しい風景の中で描いた「君の名は。」(2016年)、異常気象のもとで少年少女が懸命に生きる「天気の子」(19年)と立て続けにヒットを飛ばし、日本アニメ界をけん引する存在になった新海監督。映画の舞台あいさつなどで全国を回る中、「さびしい風景が増えた」と感じたことが新作の構想につながった。

にぎわいが消えたシャッター通り、閉鎖して野ざらしの大型施設などは今や見慣れた光景になってしまった。長野県で建築業を営む監督の実家がかつて手がけた建物の中にも「誰も住まなくなり、周りも緑や動物ばかりという場所が少なくない」という。

「家や団地などを建てる時には地鎮祭をするが、終わる時には何もしない。お葬式で亡くなった人を悼むのであれば、人がいなくなった場所を悼む物語はどうかと考えた」。思い浮かんだのは廃虚を巡って場所を鎮め、カギを閉める行為。「今つくるのなら扉を開くのではなく、閉じる物語。きちんと閉じ、次に進むべき場所を見つけるものにしたいと思った」と振り返る。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD27DIF0X21C22A0000000/