世界ワーストの債務残高水準 日本の財政は持続可能か

どうなるニッポンの財政と税(1) 財務省 松本圭介主計局調査課長

英国が9月、財政拡大にアクセルを踏もうとした途端、財政の先行き懸念から国債売りや通貨売りに見舞われた。GDP(国内総生産)比での債務残高が世界でも最大水準の日本にとっても無縁ではいられない。防衛費やグリーン投資の財源の手当ても必要になってくるなか、財政をつかさどる財務省は今、どのような問題意識を持っているのか、主計局の松本圭介調査課長に聞いた。

- 英国のトラス政権の大規模減税策が金融市場を混乱させ、首相が事実上の引責辞任に追い込まれました。どう受け止めていますか。

松本圭介・財務省主計局調査課長(以下、松本氏):英国の状況には我々も注目していました。もともとトラス氏は減税を掲げて当選したので、財政拡張的な施策を打ち出すのだろうと思っていましたが、その後にあそこまで市場が混乱するとは予測していませんでした。しかも、動きが非常に早かった。率直なところ、驚きました。

 なぜ市場が混乱したかについては色々な見方があるでしょうが、1つはインフレ対応のため金融政策が引き締めに入っているなかで、市場の想定以上の減税・財政拡大をやろうとしたことで、政策の整合性が取れていないという批判があったのだと思います。2つ目は、英国では、財務省から独立した財政責任庁が中長期の財政見通しを確認しながら財政運営を進める仕組みが確立していますが、この確認プロセスが欠落していたことです。そのことが、市場関係者から不評を買った面もあるのだと思います。

 結果的に減税案はほとんど撤回となり、エネルギー価格の高騰対策についても、来年度以降の分は財務省主導で見直すと発表されました。政策の撤回のスピードもものすごく速く、これも驚きでした。

 英国と日本は状況が違います。「日本でも同じことが起きかねない」と殊更に言うつもりもありません。ただし、何かの拍子に市場からの信認が損なわれると、市場は一本調子で急変動しうるということだと思います。そうした事態が、先進国である英国で起きたのは、ショッキングなことです。財政運営に対する市場の信認確保の大事さを、改めて実感しました。

- 改めて、今の日本の財政状況はどうなっていますか。

松本氏:ひと言で言えば、「国債・借金に依存している」状態で、しかも「その残高がすごい勢いで積み上がっている」という厳しい状況です。

 2022年度の一般会計の当初予算は107.6兆円。税収は65兆円しかなく、税外収入や日銀の納付金などを合わせても70.7兆円ですので、3分の2しかありません。残りの36.9兆円が借金です。国の会計の3分の1が借金による調達で、これだけ見てもなかなか厳しい。

 歳出のうち、国債の元利払いを除いた社会保障関係費や地方交付税などの政策経費は、当初予算で83.7兆円ですが、これに絞っても、税収と税外収入では賄えていないわけです。これが、プライマリーバランス(PB)赤字ということです。

 さらに厳しいのは、今...

詳細はサイトで
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00491/110800005/