顔腫らし、流血しながら電車に

 私は顔面付近を、相撲の張り手のように平手打ちされ、思わず尻もちです。今度はキック。立ち上がると再び、平手打ち……。このパターンが正確に繰り返され、背後に壁が近づいてきたところで、最初は近くで呆然と見ていた打撃コーチの島谷(金二)さんが止めに入ってくれたのです。「監督、これ以上やってしまうと……」とか何とか言っていたと思います。確か。

 気付けば、私はホームベース付近から三塁線方向へ、実に50メートルほども後ずさりしていました。後にも先にも、星野さんに受けた“指導”では質量共にナンバーワンでした。

 ボクサーでも、これだけ殴り続ければ酸欠状態でしょう。星野さんは肩で息をしながら「ナゴヤ球場に行ってバット取ってこい!」。そして返す刀で、そばにいた寮のお世話係のおばちゃんに「タケシにタクシーチケットは渡すなよ!」とも言いました。

 私は顔を腫らし、流血しながらも自分のバットが置いてあるナゴヤ球場へ電車で向かいました。ちょうど2軍は試合中で、みんな「どうしたんだ?」と心配してくれましたが、説明すると長くなるので、とにかく早く戻ろうと何も言わずにその場を立ち去ったのです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/2a7c146c636587d3c1f2063c0f25370bee575810?page=3