アスリートの性的画像、広がる監視 法整備には難しさも

アスリートへの性的な意図を持った撮影や画像拡散の問題で、日本オリンピック委員会(JOC)などスポーツ界が被害撲滅への共同声明を発表してから2年が経過した。
警察の取り締まりや監視の目は着実に広がってきた。法整備は「撮影罪」新設に向けて議論が進む中、ユニホームの上から撮影する行為は意図の立証が難しく対象外になる方向で、困難な現実にも直面している。

8月下旬、京都市のたけびしスタジアム京都。高校生の陸上の大会を外からスマートフォンで撮影し続けていた男性に、私服の警察官が声をかけた。「写真を確認してもいいですか」

京都府警はこの大会に合わせて3日間、約10人態勢で周囲を警戒した。10月にも見回りを実施するなど取り締まりに積極的だ。

昨年9月には府迷惑行為等防止条例違反容疑で、陸上大会に出ていた女子高生の尻などをしつこく撮影した男性を書類送検しており、人身安全対策課の田土義之次席は「続けることで監視の目も強まる」と強調する。

陸上の大会では競技の合間に放送で注意を促す光景が日常となり、表彰式ではユニホームの上にジャージーなどを着用することが増えた。
日本陸上競技連盟の和賀美咲広報は「各地の大会運営の関係者にも防止策の必要性が理解され、観客の方々からの通報もあるなど会場全体でアスリートを守る雰囲気が広がってきている」と変化を語る。

ただ、いたちごっこの面があるのも事実。JOCが設置した報告フォームには情報が今も継続的に寄せられている。スポーツ庁は7月、陸上やバレーボールの取り組みを競技団体などに紹介し、対策を要請した。

▽難しい判断
被害防止には、かねて法整備の重要性が指摘されてきた。刑法の性犯罪規定の在り方を検討する法制審議会の部会では「撮影罪」が議論されており、10月下旬に法務省が示した試案には、性的部位や下着を盗撮する罪を新設し、画像・動画の他人への提供や拡散も罰することが含まれた。

一方で、下着が透けるように赤外線カメラを使って撮影した場合などを除き、ユニホームを着た選手の胸や下半身を強調して撮影したり、そのような画像を拡散したりする行為は、現状では対象に想定されていない。

同部会委員で法政大の今井猛嘉教授は、選手を気に入って写真を撮る行為と性的に興奮して撮る行為は外見的に同じだとして「どの撮影がアスリートに屈辱感、恥辱感を与える行為なのか判断が難しい。
(撮影者が)どんな気持ちの行為なのかを認定するのは困難」と対象から外された理由を説明。今後、部会でさらに議論されるが「(刑法で規制するのは)現実的な解決策ではない」と指摘した。〔共同〕

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF150AZ0V11C22A1000000/