【プレスリリース】メスだけが生き残る仕組み —―オスを狙って殺す共生細菌ボルバキアタンパク質Oscar(オス狩る)の発見—― | 日本の研究.com
https://research-er.jp/articles/view/116408
発表者
勝間 進 (東京大学大学院農学生命科学研究科生産・環境生物学専攻 教授)
廣田 加奈子 (東京大学大学院農学生命科学研究科生産・環境生物学専攻 博士課程)
松田 典子 (東京大学大学院農学生命科学研究科生産・環境生物学専攻 特任研究員)
福井 崇弘 (東京大学大学院農学生命科学研究科生産・環境生物学専攻 博士課程)
室 智大 (東京大学大学院農学生命科学研究科生産・環境生物学専攻 博士課程)
西野 耕平 (徳島大学先端酵素学研究所藤井節郎記念医科学センター 特任技術員)
小迫 英尊 (徳島大学先端酵素学研究所藤井節郎記念医科学センター 教授)
庄司 佳祐 (東京大学定量生命科学研究所 助教)
高梨 秀樹 (東京大学大学院農学生命科学研究科生産・環境生物学専攻 助教)
藤井 毅 (摂南大学農学部農業生産学科 講師)
有村 慎一 (東京大学大学院農学生命科学研究科生産・環境生物学専攻 准教授)
木内 隆史 (東京大学大学院農学生命科学研究科生産・環境生物学専攻 准教授)
発表のポイント
チョウやガに共生する細菌ボルバキアが宿主のオスだけを狙って殺すことができるメカニズムとその原因となるタンパク質を初めて明らかにしました。
ボルバキアがオスだけを殺すメカニズムが明らかになったことで、オス殺しを誘導するタンパク質を利用したチョウ目昆虫の性操作技術の開発が期待できます。
発表概要
微生物の中には、自己の利益のために宿主を様々な方法で操作するものが存在します。共生細菌であるボルバキア(注1)はその1つであり、宿主の性決定や生殖のシステムを操作することで次世代への感染拡大を図っていると考えられています。チョウやガの仲間(チョウ目昆虫)では、ボルバキアの共生によってオスのみが致死する「オス殺し」現象が知られています。ボルバキアはミトコンドリアと同じように母系で次世代に伝わるため、オス殺しによって集団内の感染メスの割合を増やし、自身の感染拡大につなげていると考えられています。今回、東京大学大学院農学生命科学研究科の勝間進教授らのグループは、チョウ目昆虫においてオス殺しを誘導するボルバキアタンパク質Oscar(オス狩る)を同定し、オス殺しの仕組みを明らかにしました。本研究成果は、微生物がいかにして宿主の性決定システムをハイジャックし、自身の感染拡大を行うのか、そのメカニズムを解明したものです。本研究を足がかりにして、微生物による宿主の性や生殖のコントロールに関する研究の進展やOscarを利用したチョウ目昆虫の性操作技術の開発が期待されます。
(以下略