だました側も、だまされた側も警察官――。うその投資話を持ち掛けて元同僚らから現金をだまし取ったとして、福岡県警の元巡査部長が逮捕・起訴された。被害総額は1000万円超に上る見通しだ。捜査のプロが、なぜ次々とだまされたのか。そこには、警察組織特有の人間関係が浮かび上がる。
「複数の同僚から多額の借金をしているようだ」
警察内部の不正を取り締まる県警監察官室に2021年10月、1件の内部情報が寄せられた。調査対象に浮上したのは当時、県警八幡西署(北九州市)の交番に巡査部長として勤務していた田代竜一被告(46)=詐欺罪で起訴=だった。
県警によると、田代被告は1996年4月、県警に採用され、地域課の警察官として複数の交番で勤務。警察への密着取材で人気を集めるテレビ番組にも出演者として名を連ね、仕事の評価は高かった。親しみやすい人柄で、後輩からも慕われていたという。
半面、私生活ではギャンブルにのめり込んでいた。
競馬や競艇などに金をつぎ込み、生活が困窮。複数の同僚に借金をするまでになっていた。「金を貸したのは、田代被告から指導を受けた後輩が多かった」(捜査関係者)といい、同僚に返済するため、別の同僚から新たに借金する「自転車操業」を続けていた。
そこで、頼ったのが「交番人脈」だった。
交番では月に複数回の当直勤務があり、先輩が新人警察官や若手を指導する機会も多い。田代被告に金を貸した後輩たちの理由の多くは「先輩にお世話になったから」。中には、カードローンを組んでまで現金を預けたケースもあった。
https://mainichi.jp/articles/20221117/k00/00m/040/183000c