とある所にケンモという少年がいました
彼はとても怠惰で努力の仕方を知らず、そのくせプライドだけは高く、いつも斜に構えて世間を否定しては頑張る人たちの失敗を嘲笑っていました

ところで、誰だって人生に一度は主人公になる日があると言います。ケンモにとってもそれは、やはり例外ではありませんでした

ある日、彼がコンビニで前のお爺さんの後ろに並んでいると、突然オラァと屈強な男がレジに割り込みました
お爺さんは萎縮してしまい、何も言い返せません。しかしケンモは違いました
「みっともない男ですよ」ケンモは空想と現実の区別がついていないので、PCに座ってる時の感覚で安倍語録をつぶやいてしまったのです
しまった、と思っても言葉を拾い上げることはできません。ケンモの言葉は男に聞こえてしまっていました。あぁ!?と男が鬼の形相でこちらを振り向きます
ケンモはその怒号を受けて悪夢の中学時代をフラッシュバックしかけましたが、男の顔が安倍晋三にそっくりだったので、すぐに我に返ることができました
同時に(こんな人に負けるわけにはいかない)と、人生で初めて誰かのために自分を奮い立たせたのです
ケンモはありったけの力で男を殴りました。その後、店の裏でケンモは逆上した男に理不尽な暴行を受けて意識不明の重体となり、搬送先の病院で死亡が確認されました

最後まで付き添ったお爺さんは医師からその報を聞いて「意味のない勇気だよ」と心から悲しみました
でもそれは、ケンモが親以外から受けた、初めての涙でもありました