19歳という若さで結婚を選んだ彼には、事情があるようでした。小学生の頃に両親が離婚し、弟は父親と生活していましたが、彼は一人で生きる道を選びました。新聞配達をしながら、何とかお金を稼いでいたようです。ですから、まともに学校にも通えずに中学中退となったのです。そんな理由から、兵役も免除されました(※)。

友達の家を転々として生活していた18歳の時、彼はチラシを見て統一教会に転がり込んできたそうです。当時の彼は、まるで孤児のようだったと当時の教会長から聞かされたことがあります。なかなか人を信用しなかったり、少しひねくれたことを言う人でしたが、それも彼の生い立ちが関係しているのではないかと思われました。

「統一教会に入会すると日本人と結婚できる」と知り、彼は合同結婚式に参加したのです。韓国の統一教会では、信仰よりも結婚を前面に出して伝道しています。結婚の機会のなかった男性たちは、結婚をちらつかされ、入会を勧められていたのです。教会の担当者からすれば、36万組の合同結婚式を成功させるために、手段を選んでいられなかったのでしょう。

特に韓国では「日本人女性はよく働く」と言われていました。自分で相手を見つける努力をしなくても「理想の相手」を選んでもらえるし、自前で結婚するよりもずっと安い費用で嫁がもらえるという、これ以上にない機会でした。数合わせのため、ただ結婚目的で集められた男性たちは、とりあえず教義を信じたフリをして合同結婚式を済ませれば、それでジ・エンドなのです。そんな事実を、私はだいぶ後になってから知りました。

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