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ロシア侵攻「世界経済に悪影響」
APEC首脳宣言採択

アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議は19日、タイの首都バンコクで2日目の討議を終え、閉幕した。採択された首脳宣言では、ロシアのウクライナ侵攻を巡り「世界経済に悪影響を与えている」と強調。エネルギー価格高騰によるインフレ加速や食料不安の増大に懸念を示した。アジア太平洋地域での米中の主導権争いが激化する中、宣言では自由で開かれた貿易の推進や、サプライチェーン(供給網)の混乱の解消に取り組むと明記した。

 日米とロシアで意見が対立するウクライナ情勢では「ほとんどの加盟国・地域が戦争を非難した」とする一方、制裁を巡って「異なる評価があった」と両論を併記しロシアの主張を反映させた。

 岸田文雄首相は首脳会議終了後の記者会見で、ロシアの侵攻は「国際秩序の根幹を揺るがす問題だ」と述べ「関係国が連携して断固として取り組む必要がある」と訴えた。

 ロシアによる侵攻への両論併記は、今月開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の首脳宣言で採用され、APEC閣僚会議の共同声明でも盛り込まれた。意見対立が続く中、採択を優先して今回の会議でも踏襲した。

 岸田首相は2日目の討議で、中国が昨年9月に加盟申請した環太平洋連携協定(TPP)に関し「不公正な貿易慣行や経済的威圧とは相いれない協定だ」と指摘。米国が対中包囲網と位置づけ、日本も参加するインド太平洋経済枠組み(IPEF)の具体化に向け関係国と協力すると述べた。

 宣言では、新型コロナウイルスで打撃を受けた交通や観光業の回復や、加速するインフレへの対応の重要性を強調。気候変動問題では首脳宣言とは別に、脱炭素やエネルギー安全保障の確保に向けた技術協力など、APECとしての取り組みを示す「バンコク目標」を採択した。

 2023年のAPECは米国が議長国を務める。次回の首脳会議は来年11月中旬にサンフランシスコで開催する。