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5000羽のハクチョウ、一夜で激減 原因は季節外れの花火大会?

ハクチョウの飛来地として知られる新潟市中央区の鳥屋野潟。今冬も5000羽を優に超える数のハクチョウが飛来している。ただ、11月3日夜、大半が姿を消した。コロナ禍で延期されていた新潟まつり花火大会とタイミングが重なり、「季節外れの花火に驚いた?」との見方が広がった

 新潟市中心部にほど近い鳥屋野潟。広さ約193ヘクタールの湖沼には毎年、多くのハクチョウが越冬のため飛来する。県水鳥湖沼ネットワークによると、今冬は10月28日時点で5544羽を確認。調査を開始した2000年以降で最も多かった。ところが、1週間後の11月4日時点で1230羽に減少。4314羽が突然、姿を消した。

 花火大会が行われたのは3日夜。新潟市内を流れる信濃川で1時間弱にわたり、次々と花火が打ち上げられた。コロナ禍で例年の8月から11月に変更され、この時期の開催は初めてだった。

 この夜、鳥屋野潟のほとりでハクチョウを観察していた同ネットワークの佐藤安男事務局長(62)はこう振り返る。「花火の『ドン』という音が聞こえた。暗闇で姿形は見えなかったが、ハクチョウが一斉に飛び立った感じを受けた。花火の音は鉄砲の音に近く、怖かったのだろう」

 翌4日、鳥屋野潟ではハクチョウが激減。一方、約17キロ離れた同市西区の佐潟では、1週間前より1972羽多い、7011羽が確認された。佐潟も県内有数のハクチョウ飛来地で、水鳥の生息地として国際的に重要な湿地を保全するラムサール条約にも登録されている。

 佐藤さんは、鳥屋野潟にいたハクチョウが佐潟に移動したと分析。「季節外れの花火で迷惑を被ったハクチョウだが、一つの飛来地でアクシデントが起きても受け皿となる自然環境が新潟にはある。飛来数が全国でも多い理由だ」と語った。

 新潟市観光政策課には、「花火大会の時期を決める際にハクチョウのことを考えたのか」といった声が、11日までに8件寄せられたという。担当者は「真摯(しんし)に受け止め、開催延期の際は飛来の時期に重ならないように配慮していきたい」と話した。

 ◇再び舞い戻る

 同ネットワークによると、花火大会から1週間後の11日、鳥屋野潟で3131羽のハクチョウを確認。18日時点では、例年の同時期を上回る5125羽を確認したという。

 鳥類研究家の風間辰夫さん(87)は「鳥獣は音に非常に敏感。鳥屋野潟などは鳥獣保護区で銃声もなく安全なため、ハクチョウの飛来数も多い」と話し、花火大会の影響については「一度であれば生態的に悪影響を及ぼすことはない」との見方を示した。