【ニューヨーク=竹内弘文】暗号資産(仮想通貨)交換業FTXトレーディングの経営破綻を巡る初の法廷審問が22日、米東部デラウェア州連邦破産裁判所で開かれた。FTX側は破綻以降に「巨額の資金が消失あるいは盗難にあった」と述べ、サイバー攻撃による仮想通貨の流出が続いていると指摘した。約12億4000万ドル(約1750億円)の現預金を保有していることも明らかにした。

弁護士団が「米国の企業経営史上、最も突然で困難な破綻のひとつ」と述べた破綻処理手続きがようやく始動した。米連邦破産法11条(チャプター11)の適用申請から初回の審問まで10日あまりも要するのは極めて異例だという。審問には新たに最高経営責任者(CEO)に就任したジョン・レイ氏らFTX関係者のほか、債権者の代理人などが参加した。

FTXはチャプター11の適用申請直後、不正アクセスによる仮想通貨の流出が起きているとツイッターなどで報告していた。仮想通貨の分析会社エリプティックコネクトによると、20日までに4億7700万ドル相当の不正な移動があったという。FTXの弁護士団は22日、FTXが米司法省やニューヨーク州南部地区連邦地検のサイバー犯罪チームと連絡を取り合っていると述べた。

弁護士団は、FTX創業者で前CEOのサム・バンクマン・フリード氏のずさんな経営について批判した。FTXが本社を構えるバハマでは、約3億ドルもの企業資金が事業と関連の薄い不動産購入に充てられた。多くは自宅や別荘として使われたという。

バンクマン・フリード氏は企業統治を無視し、周囲の一握りの関係者にグループ経営の権力を集中させていた。経営破綻に伴い同氏がCEOから退いたことは「裸の王様であったと知らしめた」とFTX弁護士団のジェームス・ブロムリー氏は指摘した。

FTXは、裁判所に提出した文書で20日時点の現預金保有状況についても明らかにした。グループ全体で約12億4000万ドルの資金があり、このうち約2億6000万ドルが顧客からの預かり金という。日本法人FTXジャパン単体では約1億7000万ドルの現預金があり、うち5000万ドル強が預かり金だ。

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