https://www.kddi-research.jp/newsrelease/2022/102401.html
点群圧縮技術の最新の国際標準方式に対応したリアルタイムエンコーダーを開発
〜メタバースでの活用が期待される3D映像を高い表現力で伝送〜
株式会社KDDI総合研究所は、三次元点群圧縮技術の最新の国際標準方式であるV-PCC(注1)に対応したリアルタイムエンコーダーの開発に世界で初めて成功しました(注2)。これにより、人物などの3D点群のデータ品質を落とすことなくデータ量を大幅に削減し、効率的にモバイル回線でリアルタイム伝送することが可能となります。高精細な3D映像により、表情や仕草といった繊細な動きを高い臨場感で表現できるため、現実世界と仮想世界をつなぐ技術として、今後、メタバースでのショーイベントなどにおける活用が期待されます。
【背景】
近年、ボリュメトリックスタジオ(注3)が多数開設され、臨場感のある高精細な三次元データである3D点群を利用したコンテンツ制作が広く行われるようになり、それらのコンテンツは膨大なデータ量となっています。また、PCやタブレット、スマートフォン、ヘッドマウントディスプレイなど3D点群のコンテンツを視聴する端末形態は多様化しています。このような状況で、さまざまな環境において快適に高品質な視聴体験を提供するためには、3D点群のデータ品質を維持したままデータ量を削減する必要がありますが、これまでの圧縮技術では50Mbps以上のデータ量を要します。これはモバイル回線を介して安定的に伝送することは困難なデータ量であり、さらなる削減が求められていました。
KDDI総合研究所は、2020年からV-PCCの国際標準化活動に携わってきており、V-PCCの実用化に向けた技術や知識を蓄積してきました。V-PCCは動きのある人物などの3D点群の圧縮に適しており、例えば、フォトリアルな人物表現によるライブコマースなど、主にコンテンツ配信での利用が期待されています。V-PCCは非圧縮時と比較し、品質を維持しながら、データ量を1/40に削減することが可能です。これは、これまでの圧縮技術と比較して2倍の性能に匹敵し、上述の50Mbps以上というビットレートを半分に抑えることができ、結果、モバイル回線を介した伝送を可能とします。
一方で、さまざまなショーイベントで臨場感のある視聴を実現するには3D点群として2,000万点/秒(1.0Gbps)規模が必要ですが、圧縮にかかる処理負荷が高く、リアルタイム処理は困難な状況で
【今回の成果】
このたび、KDDI総合研究所はV-PCCに対応したリアルタイムエンコーダーの実現に向けて、約400倍の高速化につながる2つの技術を確立し、PCソフトウェアにより動作する、V-PCC対応リアルタイムエンコーダーの開発に成功しました。
(1)3D点群を通常の映像と同じ形式へ高速に変換する技術
(2)V-PCCに適したタスクスケジューリング方式によるCPU使用率を改善する技術
この結果、3D点群のデータ品質を落とすことなく、効率的にモバイル回線でリアルタイム伝送することが可能となります。3D点群のライブ配信ができることにより、例えば音楽やファッションなどのショーイベントを対象に、ボリュメトリックスタジオで撮影した映像をそのままメタバースに参加させるといった新しいイベント体験の創出が期待されます