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フィギュアスケート樋口新葉、「充電」の理由 語った率直な胸の内
抱えていた葛藤
今年2月の北京冬季五輪で活躍したフィギュアスケート女子の樋口新葉(21)=明大、ノエビア=は、新シーズンが始まって間もない10月5日に一つの決断を発表した。「今シーズンの競技活動は全て見送らせていただくことになりました」。思い悩んだ末に決めた休養。でも今は、前向きに「充電」期間を過ごしている。さまざまな葛藤を抱えてきたそれまでの経緯、自分の滑りを楽しみにしてくれるファンへの思いなど、率直な胸の内を聞いた
今季に向けた樋口の取材を振り返ると、いくつかの言葉に気持ちの揺れがうかがえた。休養を決めた本人に、率直に聞くと「感じていましたか?」との答えが返ってきた。昨季終了後、新シーズンの目標として「全日本選手権優勝」を掲げ、一方では「もうちょっと自分の気持ちを高められるようにしたい」と話すこともあった。「矛盾したことをしゃべっているな」という感覚があったというが、それぞれが本音だった。
樋口はこれまでも目標をはっきりと口にして、自らを奮い立たせてきた。大技のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)習得もそう。惜しくも代表を逃した2018年平昌五輪後も、まだ見ぬ大舞台への意欲を隠さず、4年後に北京のリンクに立った。団体では日本の五輪初メダルに貢献。個人戦ではトリプルアクセルをショートプログラム、フリーともに決め、5位入賞を果たした。次の大きなターゲットを見据える上で、これまで4度の2位が最高の全日本選手権制覇への思いが強いのは事実だった。
大きかった達成感
一方で、「シーズン前からずっとしんどい練習をたくさんしてきた」と振り返る昨季は2月の五輪、3月の世界選手権まで完走。その過程では、吐き気が収まらない体調不良とも闘い、シーズン終了後には右脚の疲労骨折も発覚した。全力で駆け抜けた中で「昨季は自分の目標、やりたいことをできた」という達成感も、やはり大きかった。
脚の回復を優先させるために練習から離れている時期に、この先について考える時間が多くあった。その間、「もやもやしている」自分がいることに気付いた。状態を見ながら今季への準備を始めても、「昨季の競技レベルに戻すのは難しいなというのは、うすうす感じていた」。