収入の低い糖尿病男性は食物繊維の摂取量が少ない傾向、京都医科大学・松下記念病院・京都府立大学研究報告

収入の低い糖尿病男性は食物繊維摂取量が少ない
2型糖尿病患者の世帯収入と食習慣との関連を調査した研究から、収入の低い男性は食物繊維の摂取量が少なく、食事性酸負荷が高いという有意な関連が報告された。

京都医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科の高橋芙由子氏、福井道明氏、松下記念病院糖尿病・内分泌科の橋本善隆氏、京都府立大学大学院生命環境科学研究科の小林ゆき子氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrients」に2022年8月7日掲載された。

健康的な食習慣は2型糖尿病治療の根幹であり、食物繊維の摂取量と血糖コントロールや酸負荷の高い食事と腎機能低下などの関連が報告されている。

一方、世帯収入がさまざまな疾患のリスクと関連しており、その一因として健康的とされる食品は高価なことが多く、収入が低い場合はそれらの食品の摂取が限られることの関連が考えられている。

ただし、これまでのところ、2型糖尿病患者の世帯収入と食物繊維摂取量や食事性酸負荷レベルとの関連は明らかになっていない。

高橋氏らは、京都府立医科大学などが外来糖尿病患者を対象に行っている前向きコホート研究「KAMOGAWA-DMコホート」のデータを横断的に解析し、この関連を検討した。

解析対象者は同コホート研究参加者のうち、食習慣や世帯収入に関するアンケートに回答し、データ欠落のない201人(平均年齢69.0±8.8歳、男性63.7%、BMI23.8±3.5kg/m2、HbA1c7.3±0.9%、糖尿病罹病期間17.7±11.0年)。

食習慣・栄養素摂取量は簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)で評価した。その結果、食物繊維摂取量は、男性12.1±5.0g/日、女性12.3±4.9g/日だった。

また、食事性酸負荷の指標として評価したPRALスコア(潜在的腎臓酸負荷の指標)は、男性7.6±12.2mEq/日、女性3.7±13.1mEq/日、NEAPスコア(内因性酸産生量の指標)は同順に50.1±10.7mEq/日、47.0±10.6mEq/日だった。

なお、PRALスコアやNEAPスコアは、肉や魚などの酸性食品の摂取が多いことや、野菜や果物などのアルカリ性食品の摂取が少ないことで上昇する。

世帯収入については500万円をカットオフ値として二分した。男性の32.8%、女性の16.4%が高収入に該当した。

高収入群は低収入群に比べて有意に若年で(65.3±10.4対70.4±7.7歳)、男性が多かった(77.8対58.5%)。なお、BMIやHbA1cには有意差がなかった。

一方で、食物繊維摂取量は高収入群の方が多かった(13.5±5.9対11.7±4.7g/日)。ただし男女別に解析すると、男性では全体解析と同様に高収入群の食物繊維摂取量が有意に多かったが、女性では世帯収入の多寡による有意差は見られなかった。

一方、食事性酸負荷の指標(PRALスコアとNEAPスコア)は、いずれも全体解析では有意差がなく、性別の解析では男性のみ、高収入群の方が低いという有意差が認められた。

次に、これらの関係に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、糖尿病罹病期間、HbA1c、中性脂肪、高血圧、摂取エネルギー量)を調整し、世帯収入の多寡と食物繊維摂取量、NEAPスコアとの関連を検討。

すると、女性では世帯収入と食物繊維摂取量およびNEAPスコアとの間に有意な関連が示されなかったが、男性では、高収入群は食物繊維摂取量が多く(P=0.010)、NEAPスコアは低い(P<0.001)という関連が認められた。

以上より著者らは、「世帯収入は、男性の食物繊維摂取量と食事性酸負荷に関連していた。糖尿病診療を行なう臨床医や栄養士は、世帯収入の低い男性の食事の質に注意を払う必要がある」と結論付けている。

なお、女性でこの関連が有意でなかったことの理由については、「女性は男性よりも食事に関するセルフケアの意識が高く、収入に関わらず野菜や果物を男性より多く取る傾向があるためではないか」と考察している。

また、既報研究で示されていた世帯収入とHbA1cとの関連が本研究では有意でなかったことに関しては、「本研究では参加者の大半が長期間外来受診を継続しており、血糖管理が一定水準以上に達していたためと考えられる」と述べている。(HealthDay News 2022年11月28日)

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