【人権週間】個性認め合う社会に（１２月５日）（福島民報）
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全ての人が生まれながらに持つ人権は、ともすると傷つき、傷つけやすい。思いやりの心で守られていると言っても過言ではないだろう。人権週間が４日に始まった。１０日は国連が定める「人権デー」だ。個性を認め合う社会にどこまで達しているのか、改めて考えたい。
法務省は人権啓発活動に１７の強調項目を掲げた。女性、子ども、高齢者関係をはじめ、インターネット上の誹謗［ひぼう］中傷、差別を助長するような情報発信、感染症や障害などを理由にした偏見、差別、犯罪被害者への中傷やプライバシー侵害など解決すべき課題を示している。
内閣府が今年の人権擁護に関する世論調査で関心のある分野を聞いたところ、「ネット上の誹謗中傷」は５３・０％に上った。設問が若干異なる前回２０１７（平成２９）年までの調査と単純比較はできないが、初めて半数を超えた調査結果は、人権侵害の手段や現場がネットの世界に広がる現状を映し出す。
健全なネット環境を維持し、被害者救済を円滑にする改正プロバイダ責任制限法が１０月に施行された。関係機関は周知に努めて被害の拡大、防止につなげてもらいたい。
障害者については、いじめや差別的な言葉など、女性は男女の固定的な役割分担意識やセクハラなどが上位を占めた。気になるのは子どもに関して「いじめ、虐待、体罰に気がついているのに何もしない」が５６％に上ったことだ。現代は「他者への無関心」が進んでいるとも指摘される。学校だけでなく地域単位で目を配れるような環境も整えていかねばならない。
人権週間にちなみ、福島地方法務局は県人権擁護委員連合会と協力して特設相談所を県内各地で開設している。家庭内の問題、仕事や近隣のトラブルなど幅広い相談に応じる。人権に関する悩みがある人は抱え込まず、まずは話を聞いてもらい、解決の糸口を見つけてほしい。
事業所向けの研修も行っている。ハラスメント、不当な扱いといった社内外で起き得る人権問題への理解を深める格好の機会として、積極的な利用を求めたい。会社全体の意識が高まれば、職場環境や生産性とともに企業イメージの向上にも結び付く。子どもから大学生が対象の人権教室もあり、教育の中に取り入れるのも意味深い。
国連の持続可能な開発目標（ＳＤＧｓ）に「誰一人取り残さない」社会の実現がある。人権の重みを胸に刻み、みんなで守る意識づくりが出発点になる。（湯田輝彦）
