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大型看板の落下事故と屋外広告物点検について

近年、日本各地で大型看板の落下事故が相次いでいます。インターネットやテレビなどで落下事故の情報を目にし、安全点検の必要性を感じている方も多いのではないでしょうか。
大型看板を含めた屋外広告物は、生活に必要な情報を提供し、街の活気や賑わいをもたらします。しかし、管理が不十分だと、落下や倒壊による物損事故だけでなく、歩行者に怪我などの被害を与えてしまった場合は法的責任を負わなければなりません。
本記事では、2022年に起きた大型看板の落下事故の事例を紹介するとともに、相次ぐ事故を受け、全国の自治体で屋外広告物の安全点検の義務化が進んでいることについて解説します。屋外広告物の所有者や管理者の方は、ぜひ参考にしてください。
大型台風14号による被害【2022年9月】
近年強い勢力の大型台風が多く発生し、各地に被害をもたらしています。9月に発生した大型台風14号では、大雨や暴風の影響により各地で落下事故が報告されています。
高知県高知市では、長さ約10メートルほどのトレーニングジムの縦型看板が歩道に落下。看板が落ちているのを出勤してきた従業員が発見しました。この事故による怪我人はいませんでしたが、看板の割れた破片も道に散乱していたとの報告もあり、大事故の危険性がありました。
徳島県名西郡では、ディスカウントストアで屋根にあった長さ10メートルほどの看板が落ちているのを出勤してきた従業員が発見しました。
大型看板の落下事故以外にも、愛媛県宇和島市の市立中学校で、体育館の屋根の鋼板の一部が強風で飛ばされ、周辺住宅の屋根や壁に被害が出ました。また福岡県北九州市では、ビル屋上にある大型看板の支柱が強風で曲がり、落下の危険性があるため解体作業が行われました。この解体作業により道路は一時規制されました。
土産物店の看板が落下、通行人2人がけが【2022年6月27日】
2022年6月27日午後、静岡県伊東市のJR伊東駅前で土産物店の看板が落下し、看板が肩に衝突した男性と、看板を避けようとして転倒した女性が軽傷を負いました。約13メートルの高さから落下したのは、15年ほど前に外壁に取り付けられた発泡スチロール製の看板で、名産のキンメダイをかたどったものでした。大きさは、長さ約4メートル、幅最大1.3メートルで、重さは少なくとも30kg程度あったとみられています。
休日には観光客で賑わう場所であることから、事故が発生したタイミングによっては、さらに被害が拡大していた可能性もありました。
無許可のビル壁面看板が落下し、車に直撃【2022年6月24日】
2022年6月24日、熊本県熊本市の繁華街でビルの壁面看板が落下し、隣接する時間貸し駐車場に停めてあった車に直撃しました。当日の熊本市内は、強風が観測されていました。
落下した看板は、縦約5.4メートル、幅約4.5メートルの大きさで、熊本市屋外広告物条例第6条の規定に違反した「無許可の屋外広告物」でした。幸いにもけが人は出ていませんが、熊本市では壁面広告の安全点検を呼びかける緊急の見回りを実施するとともに、無許可の大型看板などがないか確認を進めています。
スーパーマーケットの大型看板が落下【2022年5月4日】
2022年5月4日午後、静岡県静岡市のスーパーマーケットで大型看板が落下しました。落下したアルミ製の大型看板は、2015年にスーパーマーケットの外壁に取り付けられ、縦約5メートル、幅約9メートル、重さ約450kgにもおよぶ大きさでした。
落下場所は、スーパーマーケットの敷地内ではありましたが、通常は人が立ち入らない場所であったため、幸いけが人は出ませんでした。しかし、歩道に接する場所であることから、状況次第では通行人に直撃し、大きな事故につながった可能性もあります。
この落下事故を受け、スーパーマーケットの運営会社は、他店舗も含めて緊急点検を行なっています。
屋外広告物点検の義務化
頻発する看板落下事故を背景に、近年、地方自治体による屋外広告物の安全点検の義務化が進んでいます。2022年4月1日時点で条例を制定している自治体は、約74%*(172/231)です。
*施行予定段階のものを含む(2022年6月ビューローベリタス調べ)
屋外広告物の安全点検とは、日常的に行うもの、有資格者に依頼して定期的に行うもの、地震や台風のあとに臨時で行うものなどさまざまあり、点検の対象となる屋外広告物の種類や点検周期、点検項目なども自治体によって異なります。
屋外広告物を掲示・設置する際のルールは、掲示・設置場所を管轄する各自治体のウェブサイトなどで確認できます。屋外広告物の所有者や管理者は、事前にご確認ください。