ソーラーだらけ、地元に波紋

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20221208-OYT1T50238/

 五島列島の北端にある宇久島(長崎県佐世保市)。周囲37キロ・メートル、人口約1800人の小さな島が、国内最大のメガソーラー(大規模太陽光発電所)計画で揺れている。

 完成すれば、150万枚もの太陽光パネルが設置され、変電所や鉄塔、電柱といった関連施設を含め、島の面積の4分の1を占めることになる。出力は原子力発電所1基分に匹敵する計48万キロ・ワット。九州本土と64キロ・メートルの海底ケーブルで結ぶ計画だ。

 土地の借り上げ契約は完了し、工事関係者の宿舎や資材置き場の設置が進む。だが、地元や漁協が反対し、工事が完了する見通しは立たない。

 「なぜやる方向で決まっているんだ」。事業を主導する九州電力グループの九電工などによる地元説明会では一部住民が反発。島南部に住む木寺進さん(76)は「まるで植民地だ。太陽光パネルだらけの島になる」と憤る。

 一方で、事業に期待する住民もいる。島の人口は過去20年で半減した。耕作放棄地が広がり、メガソーラーに雇用創出の期待がかかる。
工事による特需に加え、維持管理などで50〜100人の雇用が見込まれるという。
「何もしなければ、島は廃虚だらけになる」。島で生まれ育った大田洋子さん(69)はメガソーラー計画に島の未来を託す。

 計画が公表されたのは2014年。再生可能エネルギーの普及に向け、政府が12年に導入した「固定価格買い取り制度(FIT)」は当時、1キロ・ワット時あたり40円という破格の買い取り価格で、「太陽光バブル」を招いた。

 この価格での買い取りの期限は40年9月。発電開始が1年遅れるごとに約200億円を失う計算だ。
九電工の幹部は「事業の中断は地元に影響が大きい。
FITなら採算は確保できる」と話す。