https://www.agrinews.co.jp/news/index/123798

米の隠れた力、見つけた 糖、乳酸菌抽出→砂糖、ヨーグルトに

米が砂糖の代わりやヨーグルトに──。米需要の創出が課題となる中、米から成分を取り出して活用する試みが動き出している。酒蔵や工業試験場が糖や乳酸菌などを分離して製品を開発。近年高まる健康志向にも対応できるとして、米の新たな使い道を切り開く一手とする。

米由来の糖 兵庫・本田商店

 酒蔵の本田商店(兵庫県姫路市)は、米粉から蜂蜜のような液状の糖の抽出に成功した。商品化第1弾として、地元の和菓子メーカーと連携しトーストに塗るなどして楽しめるあんこのジャムを砂糖不使用で開発。同社の朴杓汝醸造部長は「健康志向が高まる中で、ショ糖の代わりとして米由来の糖を提案したい」と期待する。

 同社では、日本酒造りの工程で削った酒造好適米「山田錦」の米粉を焼酎の原料にしている。コロナ禍で製造量が落ち込んだため、約2年前から糖にできないか研究し始めた。

 米粉を発酵させたものをろ過して透明にし、蒸留機で濃縮して糖度を70以上に高めて作る。通常の酒造りでは、加熱して気化させたアルコールを集めるのに蒸留機を使うところ、水分を飛ばすために加熱して残った液体の方を活用する逆転の発想が鍵となった。

 現在は兵庫県立大学と共同でビタミン含有量など栄養素の分析を進める他、使いやすい粉末化も検討する。

植物性ヨーグルト 石川県工業試験場

 米を使った発酵食品から乳酸菌を取り出し、機能性を売りにした製品開発に挑むのが、石川県工業試験場だ。免疫力を高めたり血圧上昇を抑えたりする効果が期待できる乳酸菌が見つかっており、現在はヨーグルトの開発を目指す。

 県内にはなれずしや山廃造りの清酒など、米が乳酸発酵するのを生かした伝統的な発酵食品が多い。試験場ではこれまでに、こうした発酵食品から発見した乳酸菌を使い、米を発酵させたヨーグルト風味の飲料を県内の企業と製品化。今度は、牛乳の代わりに米や大麦などを乳酸菌で発酵させて植物性ヨーグルトを開発したい考えだ。

 近年の主食用米の需要は年間10万トンずつ減るとされ、水田を維持するには新たな需要の創出が急務となっている。試験場は「乳酸菌を使えばさまざまな機能性食品を開発できる可能性がある。米需要の開拓につなげたい」とする。