世界的な物価高を受けて、多くの国で労働者たちが「正当な賃金を払え」という怒りの声を上げている。

【7割の人がボーナスの支給額に不満】

12月9日、ロイターが報じたところによれば、オーストラリアでアップル社の従業員約200人が賃上げなどを求めて1日半のストライキを行う準備をしているという。

8日には米ニューヨーク・タイムズの労働組合が賃上げなどを求めて24時間のストライキに踏み切った。1100人超の従業員が賛同しており、同社によれば約40年ぶりの規模になるという。また11月には、米スターバックスで初めて従業員約2000人が100店舗以上でストライキを起こした。

英国では、空港で入国審査などを担当する職員らが賃上げを求めて、年末の大型連休に合わせ、ストライキを実施することになった。また、看護師らの労働組合も賃上げを求めて、12月15日と20日にストライキを実施する。組合によれば、これは英国の公的医療制度(NHS)史上最大規模のストライキとなる見込みだという。

フランスでも11月16日、パリの有名百貨店「ギャラリー・ラファイエット」でクリスマスツリーの点灯式をしたところ、賃上げを求める労働団体のデモ隊が乱入し「ハッピーじゃない」「給料を上げろ」などと絶叫した。

お隣の韓国でも「給料上げろ」の大合唱だ。11月24日、韓国の労働組合・全国民主労働組合総連盟の貨物連帯が無期限のゼネラルストライキに入った。約2万2000人のトラック運転手がストに参加したという。

そんな中で、ストライキはおろか賃上げを求めるデモもあまり盛り上がらず、労働者から「正当な賃金を払え」という怒りの声が、諸外国と比べると明らかに少ない国がある。そう、われらが日本だ。


衰退に歯止めがかからず
ご存じのように、日本は常軌を逸した低賃金が30年続いており、G7の中で労働生産性は最下位で、衰退に歯止めがからない。日本生産性本部のまとめでは、19年にOECD加盟38カ国中21位だったが、20年には23位とさらに落ち込んでいる。

これは1970年以降で最低順位だという。数年前からメディアや評論家は口を開けば「賃上げをすることが大事です」と訴えてきたが、賃下げに歯止めがかからず、ついに平均給与や1人当たりGDPで韓国にまで抜かれてしまった。

12月6日に厚生労働省が発表した10月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価の変動を反映させた実質賃金は前年同月比2.6%減で、7カ月連続のマイナスとなった。減少幅は、15年6月以来、7年4カ月ぶりの大きさだ。

ここまで深刻な事態になっているのだから、諸外国のような賃上げを求めるストライキやデモが多発しているはずだが、街ではそういう集まりを目にしない。むしろ、会社の中で「給料を上げさせるように社長に掛け合おうぜ」などと呼びかけると、「あいつは左翼じゃないのか?」などと白い目で見られてしまう。

「正当な賃金を払え」と経営者に迫ることは、世界では労働者の当たり前の権利だが、日本ではそういうことをする労働者は、政治的にも思想的に偏っていると思われるのだ。これはなぜか。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/eedf24380fe8753b5aabc48a5a011a2c17151a7d