eスポーツは男女の区別なく、同じ舞台で戦えるスポーツ。プロ選手の数は圧倒的に男性が多く、上位陣も男性が席巻する中、日本にも男性と対等に渡り合える数少ない女性選手がいる。その代表的選手が、たぬかなだ。格闘ゲーム『鉄拳』のアメリカ大会「Combo Breaker 2017」の鉄拳部門で3位に入賞し、ワールドツアー東南アジア大会で準優勝の実績を持つ女性プロゲーマーだ。

 日本人で2人目の女性プロゲーマーとして注目を集めてきた、たぬかな。しかしそのゲーム人生で戦ってきたのは、ゲームの中にいるキャラクターだけではなかった。まだ無名の中学時代から、女性蔑視、誹謗中傷と常に戦ってきた。

 親が寛容だったこともあり、幼い頃からゲームに親しんできたたぬかなは、ゲームをより楽しむために、中学生の頃から地元徳島にあるゲームセンターに足を運ぶようになる。

「当時のゲームセンターは、薄暗くてヤジが飛んでいて、たばこの煙でモワッとしていましたが、私にとっては、年が離れている大人の人たちや、別の生き方をしている人たちと、コミュニケーションを取る場になっていたので面白かったですね。そこにいる人たちの男女比はだいたい男30に対して、女1という感じでした」

 ただそんな楽しい日々の中で、少しずつ違和感を持ち始めたという。それは女性への敵対心に近い感情だ。

「私が初心者レベルのうちは、わざと負けてくれたりして、おもてなし的な扱いがありました。しかし強くなってくると、女性に負けるのが嫌な人が出てくるんです。私との対戦を拒否して、『女とはやらない』と言っていましたね。当時は差別という感じというより、寛容ではないなと思っていました」

 たぬかながゲームセンターに通っていた2000年代から、ネット上にさまざまな掲示板が存在していた。その中には『鉄拳』専用の掲示板もあり、たぬかな自身もよく閲覧していたが、その内容でしばしば憤りを感じていたという。

「基本的に会っている時にはみんな優しいんですが、ネットの掲示板ではいろいろ書かれていました。ありもしない私の男女関係のことを書かれたりすることもありましたし、容姿のことについては本当に多かったですね」
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/e_sports/2021/06/24/e_8/