他方、企業においては、需要不足による国内マーケットの縮小を受けて、設備投資を減らし海外進出を進めたが、それがさらなる需要不足を招いてしまい、賃金も低迷が続いた。また、各地域における財政支出を通じて供給される資金が、最終的に東京等の本社へと流出してしまい、その地域の発展に十分に寄与していないという問題もある。

https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2022/0630_09.html
悪循環を打破するには、経済が正常化するまで積極財政を継続しなければならない(図表2参照)。これまで政府債務の拡大を理由に緊縮的な財政運営がなされてきた。しかし、政府債務(負債)の裏には必ず資産がある。事実、政府債務が拡大するなかで民間金融資産も増加を続けてきた。日本で財政危機が生じる可能性は極めて低い。政府支出の制約となるのはインフレであり、相対的に低インフレの続く日本では財政支出の余力は大きい。

必要なのは政府投資の活性化である。デジタルやグリーンによる社会革新を推進するほか、ウクライナ危機によって明らかとなったエネルギーや食料の安全保障などの課題解決に向け、政府は積極的に投資すべきである。こうした投資は、成長力を強化するとともに、足元のエネルギーや食料価格の高騰によるコストプッシュ型インフレの抑制にもつながる。

中間層復活のためには、財政支出による需要増加を賃上げにつなげる必要がある。高圧経済(経済の過熱状態をしばらく容認すること)を形成し、労働需要を積極的につくり出すほか、公共部門の賃上げや雇用拡大を進め、民間部門に賃金上昇圧力をかけることも有効だろう。さらに、日本各地で財政支出によって供給された資金を、それぞれの地域内で循環させる観点から、地域経済の活性化を進めることも重要である。

経済正常化まで積極財政を続けることでマクロ経済が好転すれば、日本企業も投資の拡大や賃上げを迫られる。消極的な企業は成長機会を逸し、人材確保もままならなくなる。

日本を成長軌道に戻し中間層を復活させるため、新たな経済財政運営へとかじを切らなければならない。
https://i.imgur.com/MomcssD.jpg