アクアライン開業25年 交通量5倍も…無料化への道は「視界不良」

 千葉県と神奈川県をつなぐ東京湾アクアラインが18日、開業から25年を迎えた。2009年の通行料金値下げもあり、交通量は当初の5倍に増えた。一方、建設時に旧日本道路公団が背負った借金の返済は計画通りに進まず、完済による無料化への道筋は「視界不良」となっている。

 NEXCO東日本によると、開業直後の1998年の車両の通行台数は1日平均約1万台だった。普通車で4000円という通行料がネックとなり、当初の期待ほど利用は伸びなかった。

 潮目が変わったのは09年。千葉県の森田健作知事(当時)が国と交渉し、値引きによるNEXCO東日本の減収分を国と県が補塡(ほてん)する形で800円への値下げを実現させた。これを契機に交通量が大きく伸び、21年は1日平均約5万1600台だった。

 県によると、14年4月~16年9月の2年半で、観光や企業の設備投資など首都圏全体で約1155億円の経済効果があった。このうち約4分の3の約869億円の「恩恵」が千葉にもたらされたとしている。

 千葉県側の終着点・木更津市では、商業施設の開業や企業の転入が相次いだ。12年に大型商業施設「三井アウトレットパーク木更津」がオープンし、21年には高級車に試乗できる「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」ができた。22年には「コストコホールセールジャパン」の本社が、対岸の川崎市から移ってきた。木更津市の人口も00年の約12万3000人から22年には約13万6000人まで増えた。

 東京理科大の寺部慎太郎教授(交通計画)はアクアライン開通で「千葉県の内房地域と、川崎市を中心とする神奈川・東京の一部が、一つの商圏としてつながった」と指摘。800円への値下げが経済効果の波及を後押ししたとし「通行料金が高いままだったら『アクアラインを建設したのにもったいない』と評価されていたかもしれない」と語る。新たなルート確保は、大規模災害への備えの意味でも意義があったとする。

 一方、建設時に旧道路公団が背負った借金の償還は計画通りに進んでいない。

 公団から負債を引き継いだNEXCO東日本によると、アクアラインの建設費約1兆4400億円の大半は財政投融資などの借金で賄った。当初の償還期間は27年までの30年間を計画していた。

 しかし、全国の高速道路の収入を一元管理する「プール制」に組み込まれたり、全国の道路で大規模修繕が行われたりした影響で、償還期限は度々延期された。現在の期限は「2063年7月」まで延びている。通行料金の取り扱いなどについては政府の審議会でも議論されており、NEXCO東日本は「引き続き、その議論を注視したい」としている。
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