https://globe.asahi.com/article/13770867
■政権批判は「空気が読めない人」か
駒沢大学法学部の山崎望教授は、2017年後期のゼミを振り返って言う。「学生たちに『共感』というか、ああ、そう考えちゃうよねと腑に落ちました」

当時、世間を騒がせていた森友・加計学園の問題を議論した。安倍政権を肯定する意見がゼミ生25人の7割を占めた。 「何政権であろうと、民主主義国家としてよくないのでは? 私がそう水を向けると、彼らはきょとんとした顔でこう言うんです。『そもそも、総理大臣に反対意見を言うのは、どうなのか』って」

政権に批判的な残りの学生に対しても、肯定派は冷たかった。「空気を読めていない、かき乱しているのが驚き、不愉快、とまで彼らは言うんです」

なぜ、そう考えるのか? 学生たちにリポートを書いてもらうと、「政治の安定性を重視しているから」という理由が多かった。不安定でも臨機応変に対応すればいいんじゃないの? 山崎氏がさらに問うと、肯定派はみな言葉に詰まってしまったという。

「理屈ではなく感覚なんです。安定に浸っていたい、多数派からはじかれて少数派になりたくない。そんな恐怖が少数派は罪という考えまで至るのではないでしょうか」

こんなデータがある。コロナ禍第2波の最中、7月に行われた朝日新聞の世論調査によれば、安倍政権の支持率は支持33%、不支持50%。コロナ対策が評価されず、経済的な打撃が深刻化したことが原因とみられるが、29歳以下の若年層は支持46%、不支持29%と、この世代だけ支持が不支持を上回った。

コロナ禍が起きる前の昨年12月の調査でも、同じことが起きていた。「桜を見る会」問題や自民党議員の不祥事が続き、30歳以上の世代では支持率が下がったのに、29歳以下だけは前月よりもわずかながら上昇していた。