実は「4次焼き芋ブーム」真っただ中、「罪悪感すくないスイーツ」強力なライバル見当たらず : 読売新聞オンライン
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半分に割ると、湯気が立ち上り、一口かじると優しい甘みが口中に広がる――。実は第4次焼き芋ブームの真っただ中だ。一昔前は軽トラックで販売される冬の風物詩だったが、最近はスーパーなどで気軽に購入することができる。焼き芋の人気の秘密は何だろうか。

自動オーブン登場 スーパーで手軽に

サツマイモ関連情報を発信する「さつまいもアンバサダー協会」代表理事の橋本 亜友樹あゆき さん(44)によると、最初の焼き芋ブームは、サツマイモが広く栽培されるようになった江戸時代だ。砂糖が貴重な時代だけに、甘い焼き芋は人気となった。焼き芋業界の市場規模を今の貨幣価値に置き換えると、江戸全体で6億円に上ると橋本さんは分析する。

明治維新以降、人口が急増し、安価な焼き芋の需要は再び高まった。これが第2次ブームだ。だが、大正時代にチョコレートなどが普及し、ブームは下火となった。

第3次ブームは石焼き芋が東京に登場した1951年以降。リヤカーや軽トラックで売られ、手軽さが受けた。だが、ファストフードやコンビニの発展で、安くておいしいおやつが身近になり、焼き芋は再び衰退した。

98年の業務用自動焼き芋オーブン登場が分岐点となる。スーパーの店頭などで焼き芋を製造、販売できるようになった。首都圏を中心に約300店舗を展開するスーパー「マルエツ」は2005年、オーブンを使って店頭での焼き芋販売を本格的に始めた。現在はほぼ全店で販売している。

他の多くのスーパーもオーブンを導入し、秋口になると店のどこからともなく焼き芋の香りがするようになった。高カロリーのスイーツに比べて消費者が食べても罪悪感を感じにくいためか、近年の健康志向に応え、今日に続く第4次焼き芋ブームとなっている。

進む多品種化 主役は「ねっとり系」

焼き芋の主役はかつて、「高系14号」「ベニアズマ」といったほくほく系だったが、最近はねっとりとして甘い品種が、消費者の心をつかんでいる。

その代表格「べにはるか」は、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が07年に品種登録を申請した品種だ。当時、種子島で栽培されていた「安納いも」が話題を集め、同系列のべにはるかは一気に広がった。「シルクスイート」などの新品種も登場し、サツマイモは多品種化が進む。農研機構上級研究員の田口和憲さん(47)は「品種は今後も増えていく」と話す。

13年オープンの「焼き芋専門店ふじ」(東京)では、秋になると8品種ほどが並び、多くの客が買い求める。近年、多品種をそろえる店のほか、焼き方にこだわった店も登場している。

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