大赤字「クールジャパン機構」今どうなってる? 309億円損失…戦略会議は昨年9月から開かれず

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業績不振が問題になっていた官民ファンド「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」について、経済産業省と同機構が黒字転換目標時期を1年先送りする改善計画を出した。鳴り物入りで始まったクールジャパンだが、最近はあまり話題にならない。日本文化を海外に売り込む国家戦略は、今どうなっているのか。(特別報道部・大杉はるか)
◆「守り切れない」
 「ラストチャンス」「これで改善しなければ、統廃合の道筋も検討しないといけない」
 22日に開かれた財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会は、クールジャパン機構の改善計画に、委員から厳しい意見が相次いだ。当初の計画から1年遅れの2025年度に黒字転換させ、累積損失を33年度に解消する計画で、分科会が来年6月に進捗状況をチェックする。財務省の担当者は「成果が出ていなければ、守り切れないということになるかもしれない」と話す。
 機構は13年11月に設立。漫画やアニメ、日本食など「日本の魅力」を海外に売り込む事業などに出資し支援するファンドだ。元手として今年10月末現在、政府が1156億円、民間企業が107億円を出している。これまで56件の投資をしたが、累積損失は21年度末に309億円に拡大した。
◆「今後は先端技術にも投資」
 機構の担当者は「コロナの影響で観光分野で見込みと違ったり、中国での事業に影響が出たりした投資先もある。黒字化する時期は修正したが、すぐに統廃合ということではない」と強調。「『クールジャパン』というとイメージが狭くなりがちだが、今後は先端技術など手を付けていなかった領域にも投資を拡大する」という。
 そもそもの「クールジャパン」戦略は、12年12月に発足した第2次安倍政権が打ち出した。安倍晋三首相(当時)は最初の施政方針演説で「『クールジャパン』を世界に誇るビジネスにしていこう」と力説。初代クールジャパン担当相の稲田朋美氏がゴスロリ姿で国際イベントに出席するなど話題になった。
 だが、その後は徐々に下火に。岸田政権では岡田直樹氏が担当相を務めるが、存在感は薄く、戦略会議も昨年9月を最後に開かれていない。内閣府の担当者は「会議の予定はない。今はどう前に進めるか考えている」と悩ましげだ。
 一体「クールジャパン」とは何だったのか。東京大先端科学技術研究センターの牧原出教授(行政学)は「大きな意味では、アベノミクスの経済政策の一つ。コロナの影響もあって行き詰まり、韓国にも及ばなかったかもしれないが、日本のアニメが世界で認知されるなど変化もあった」と話す。
 「政策の仕組みが今のままでいいのか検証は必要だ」としたうえで、今後について「安倍政権は戦略を立て仕掛けたが、岸田政権は目の前のことに追われ余裕がない。何か打ち出すのは無理では」とみる。