野比温泉「いつ壊れるか…限界」

「あと3日。閉館まで毎日、来るよ」「風呂に入って、ここで碁を打つのが楽しみだった。これから、どうしよう」。22日午後、野比温泉は名残を惜しむ常連でにぎわっていた。茶褐色の軟らかい湯はナトリウムと炭酸水素塩泉。三浦市から来た女性客(81)は「出た後もいつまでも体がぽかぽかしている」と話す。

運営する食品会社の飯島敏雄社長(77)の父・敬司さんが、食品用冷蔵庫の冷却水にと井戸を掘ったところ、茶色く濁った水が出た。温泉好きだった敬司さんは県温泉地学研究所に検査を依頼し、温泉と確認。1989年に開業した。

当初、飯島社長らきょうだい5人は「うまくいくはずがない」と反対したという。ところが、開業後は朝から晩まで途切れることなく客が訪れ、中には毎日来る人も。宴会場や食堂もあり、老人会の利用などで活況を呈し、ピーク時の15年ほど前は毎日150~200人が訪れた。「げた箱に靴が入り切らず、入場を断るほどの人気だった」と飯島社長は振り返る。

ただ、33年が経過し、ボイラーやポンプなどの設備が老朽化。さらにコロナ禍で1日の客数も70、80人に落ちていた。

8月に閉館を告知すると惜しむ客が押し寄せ、今月21、22日はそれぞれ200人が訪れたという。飯島社長は「リニューアルや修理はしているが、いつ壊れるか分からないと心配が増え、限界だった。閉館は非常に心苦しい」と残念がった。

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