焦点:任務拡大する自衛隊、能力増強の裏で解消しない隊員不足

防衛力増強の閣議決定を数日後に控えた12月上旬、10代後半から20代後半の男女11人が埼玉県の航空自衛隊入間基地に集まった。

自衛隊への入隊を希望したり、すでに入隊が決まっている彼らは基地見学に参加し、滑走路や格納庫を案内され、自衛官の説明に熱心に耳を傾けた。

「東日本大震災といった災害やミサイル防衛、中国の動向などをきっかけに国防に興味を持つようになった」と話す石田麻人さん(23)は、戦闘機の操縦士を志望している。

「不安はあるが、国防に貢献したい」とロイターに語った。

自衛隊に入り、日本の防衛に貢献したいと考えているのは他の見学参加者も同じだ。しかし、日本全体を見渡せば彼らのような存在は多くない。

中国が急速に軍事力を増強し、北朝鮮が弾道ミサイルをひっきりなしに試射する中、安全保障への関心は高まっているものの、自衛隊の応募者は過去10年で26%減少した。

日本政府が16日に決定した今後5年間の防衛費は43兆円。現行の5カ年計画から1.6倍に増やし、弾薬のほか、装備の部品不足を集中的に解消する。

有事が起きた場合に戦い続けられる態勢を強化するためだが、弾薬や武器があっても、それを使う人が十分に確保できないのが防衛省・自衛隊の悩みだ。

ロシアがウクライナに軍事侵攻し、台湾海峡の緊張が高まった今年は、特に採用が厳しいという。

「今年は特に人が集まらない。例年は地域によって偏りがあるが、今年はまんべんなく人が取れない」と、海上自衛隊の幹部は話す。

とりわけ厳しいのが、現場の中心となる「士」の階級。今年3月末時点で定員約5万4000人に対し、8割弱の人員しか埋まっていない。この階級は常に若返りを図るため、全体の4割ほどが任期付きの隊員だ。

米海軍の戦闘機パイロットを描いた映画「トップガン マーヴェリック」がヒットした影響で、今年は隊員の応募が増えるとの期待が防衛省内にはあった。

しかし、「ふたを開ければ全くだめだった」と同省関係者は話す。


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https://jp.reuters.com/article/japan-military-manpower-idJPKBN2T60E2