https://mainichi.jp/articles/20221226/k00/00m/040/224000c

東京オリンピック・パラリンピックのボートとカヌー競技の会場として整備され、毎年約1億8000万円の赤字運営が見込まれる「海の森水上競技場」(東京都江東区)に、都が新施設の建設を計画している。その費用が約6億円になることが、毎日新聞の取材で明らかになった。この競技場を巡っては、予想外の海の生物が大量発生したことにより、追加で毎年約7000万円の対策費も必要になるという。施設新築、維持費増加……。五輪閉幕から1年以上たつが、なぜ都民の負担は増え続けるのか。【金森崇之】

整備費303億円に上乗せ
 海の森水上競技場は、五輪・パラリンピック開催のために都が建設した施設の一つだ。全長2000メートルのコースや約2000席の観客席を備え、コース脇にはボートやカヌー約200艇を収容できる「艇庫」が建つ。ボートの競技場は水面が穏やかな川や湖に作られることが多いが、海の森は海上に建設したため、波を抑えるための消波装置も設置している。

 整備費は大会招致段階で69億円と試算されたが、開催決定後に風や波の対策が必要と指摘され、約15倍の1038億円に跳ね上がった。建設を取りやめて宮城県などのボート場を使うことも検討されたが、最終的には施設の規模を縮小するなどして、303億円で現在の場所に建てることになった。

 大会閉幕後には、五輪やパラリンピック用に造った設備の撤去や改修工事を進め、2022年4月に一般利用者向けにリニューアルオープン。水上競技体験や観光イベントの会場として利用され、ボートの全日本選手権なども開かれた。改修工事は競技場利用と並行して現在も続くが、22年度中にはおおむね完了する予定だという。

増設するのは二つ目の「艇庫」
 今回、都が競技場内に新たに建設するのは、ボートやカヌーなどを収容する「第2艇庫」だ。都によると、鉄骨造りの平屋建てで、延べ床面積は約1320平方メートル。ボートやカヌーなどを約80艇収容できる。五輪の選手村に使われた建設資材を再利用するという。

 都は、21年度に基本設計と実施設計の入札を実施し、落札した都内の建設コンサルタント会社に計約1億円で依頼した。この設計を基に22年11月、「第二艇庫棟(仮称)新築工事」を入札で発注。3社が応札し、12月19日に都内の建設会社が4億6200万円で落札した。落札率は99・9%だった。

 第2艇庫の建設工事は、23年12月ごろまで続く見通しだ。都は現在、この艇庫の排水や空調設備などの関連工事も発注しているため更に数千万円の費用がかかるといい、設計費や工事費は全体で少なくとも約6億円になる見込みだ。これらの費用は、競技場の整備費として公表された303億円には含まれておらず、追加で造る施設となる。