経済と政治の先行きへの不安、教育やジェンダー不平等への不満――。さまざまな理由で、日本を脱出し、海外で生きる人がじわじわ増え続けています。移住を決断した人が、日本で感じていた壁、そして海外へ出た後にぶつかった壁とは。移民の現状に詳しい大石奈々・メルボルン大学准教授に聞きました。

――海外に移住する日本人は増えているのでしょうか。

「日本人の海外流出は、ずいぶん前から静かに進んでいます。海外に住む人が提出することになっている『在留届』に基づく外務省の統計では、少なくとも平成の初め以降、海外永住者と3カ月以上滞在する長期滞在者は、ほぼ毎年増えています。コロナ禍の入国制限で長期滞在者は減りましたが、永住者は増えました。在留届や帰国・転出届を出さない人もいるので厳密な数字ではありませんが、海外在留邦人の総数は今年10月時点で約130万人です」

――「日本の若者は内向きになった」とも言われますが。

「授業料・生活費が賄えなかったり語学力が足りなかったりで、学生時代に留学するハードルは高くなっていますが、卒業後にお金をためてから出て行く人が増えているのだと考えられます。2018年の国際比較調査では、日本の大卒者が海外移住を希望する割合は、中国やインドの13%よりも高く、23%でした」

https://www.asahi.com/sp/articles/ASQDX4WQMQDVUPQJ006.html?iref=sp_new_news_list_n