一、歴史

 南シナ海地域は古来より我が国の先人が活動していた領域であり、古文書および地方誌には度々南シナ海の海域、島礁の地理的位置、地質、資源、国民による活用状況が記載されている。南海諸島は我が国の先人が発見、命名し、長期的に使用し、領土の版図に組み入れられた。大部分の島礁が長期にわたり「無人居住」(uninhabited)ではあったが、「無主地」(terra nullius)ではなかった。

(一)南海諸島は我が国の先人が最初に発見

 後漢の史家である班固(西暦32年~92年)が1世紀に編纂した『漢書』地理誌では、前漢の武帝(紀元前137年~87年)が南シナ海の海島諸国へ使者を派遣したことにより、先人が南シナ海地域の航行の記載を開始したことが記されている。航行の関係で、海洋探検家による南シナ海の島礁、砂洲などの描写もある。これは紀元前1世紀に漢朝とローマ帝国の間の貿易の際に、南シナ海を航行していたことを説明するものである