そうした状況の中、唯一電話をかけてきてくれた人がいた。カズ(三浦知良)だった。
「カズさん、俺、現地でメシも食えなくて、吐いたりしたんですよ。プレッシャーが大きくて、結果を出せませんでした」
そう言うと、電話口でカズが大声で言った。
「おまえ、そんなのに負けていたら”エース”なんかつとまんねぇぞ。
(空港で)水をかけられたらしいけど、水でよかったよ。
俺なんか、卵をぶつけられたし、いろんなものを投げられた。それは、期待の裏返しだ。気にすんな」
カズの言葉が、城の琴線(きんせん)に触れた。
「カズさんにそう言われて、もう泣きそうになったね。ほんと、カズさんの言葉に救われたよ。
俺が経験したプレッシャーとか、重圧を理解できるのは、カズさんしかいないわけで、
そのカズさんから言われたことだから(その言葉は身に沁みた)。
気持ちを切り替えてJリーグでがんばろうと思ったし、カズさんのように精神的にもっと強くならないといけないって思った。
もしカズさんの電話がなかったら、しばらく自分の殻に閉じこもっていただろうね」
城はそう言って苦笑した。
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