「未払い残業代返して」相談できず最低賃金以下で残業続けた技能実習生

技能実習生が最低賃金を下回る時給わずか400円で残業をさせられていた。“被害者”は11人のベトナム人女性。家族の暮らしを楽にするため、日本へ技能実習制度を利用して働きに来て、地方の縫製工場で貴重な労働力となっていた。彼女たちへの未払い残業は少なくても3年続き、総額2700万円にのぼる。なぜ問題は長期間発覚しなかったのか?取材から技能実習生の待遇改善を阻む構造的な問題が浮かび上がった。

■「社長さんが残業代を払ってくれません」SNSで発信されたSOS

「社長さんが残業代を払ってくれません。助けて下さい」

2022年8月、技能実習生を支援するNPO法人「日越ともいき支援会」に寄せられたメッセージだ。発信したのは愛媛県の縫製工場で働いていた20代~40代のベトナム人女性。助けを求めた1人、ドアン・ティ・トゥ・ガーさん(32)は3年前に来日した。「日本で稼いで、ベトナムで服の店を開きたい」当時4歳の息子をベトナムに残してやってきた。別れる際「3年でお金を貯めて戻ってくる。3年後にまた一緒に暮らそう」と約束してきた。

■総額2700万の残業代未払いの“からくり”

ガーさんはある日、給与明細を見ていて違和感を覚えた。「毎日5時間も残業しているのに給与が少ない」

彼女たちの2020年11月分の給与明細をみると、「11月分残業21H」として、残業代2万922円が支払われていた。しかし連日遅くまで働いたのに、残業が月にわずか21時間であるはずがない。この月は少なくとも他に109時間残業したはずだ。よく見ると明細の一番下、支給額の合計の下に「11月残業残り」の文字があった。何時間分かは書かれていない。実は、会社は109時間分の残業代を時給400円で計算し明細を書かずに欄外に記入していた。当時、この地域の最低賃金は800円余り。残業割増分を計算すると時給は1000円以上のはず。明らかに違法状態だ。他の実習生にも聞いたところみんな同じ状況だった。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/256642