テレビ埼玉で元日に放送される「埼玉政財界人チャリティ歌謡祭」をご存じか。埼玉県内の政財界人が本気で歌う姿が評判を呼び、会員制交流サイト（SNS）では「埼玉の奇祭」と呼ばれ、その存在が世界に知れ渡る。30年の歴史を重ねた番組の魅力とは－。
「第31回埼玉政財界人チャリティ歌謡祭?」
ドラムロールの音に続いて司会の元NHKアナウンサー堀尾正明さん（県立浦和高出身）の声が響く。3年ぶりの有観客開催となった収録は11月下旬、約2000人の観客を集めてさいたま市内で行われた。
番組は県内各自治体の首長や経営者らが出演し、知事が大トリを務めるのが通例。曲目も注目の的で、2019年の大野元裕知事の就任会見では「何を歌うのか」との質問も出た。
今回のトップバッターは東京ガスネットワーク埼玉支社（さいたま市）の細田千恵支社長。生バンドの演奏とともに「さくら（独唱）」をしっとりと歌った。歌い手を支え、バックで踊る社員らの仕事ぶりも番組の見どころだ。
銀行社長、首長らが続き、前半最後の中トリは総合エネルギー会社「サイサン」（同市）の川本武彦社長。「出演はライフワーク」と親子三代で出演する猛者で、昨年に続き矢沢永吉さんにふんして「IT'S UP TO YOU！」をノリノリの社員ダンサーとともに熱唱した。番組については「笑いものになっても喜ばれる温かさがある」と評した。
後半も“名物キャラ”が続く。毎回奇抜なメークが話題の小野克典・桶川市長は、MISIAさんに変身して「アイノカタチ」を歌い上げた。「だいぶ（本人に）寄せられた」と満足顔。過去の脳出血の影響で手足にまひが残るが「人間愛に支えられていると普段から感じていた」と歌詞などから選曲したと明かした。
そして大トリ前を飾ったのが、31回連続出場の結婚式場「清水園」（さいたま市）の清水志摩子社長だ。ゴージャスな衣装で、カンツォーネ「心はるかに」を美声で披露。「番組のおかげで知らない人からもよく声を掛けられる。77歳で引退も考えるが、頑張っているところを見せたい」と清水社長。レジェンドの言葉は重かった。
17人の出演者が最後に並んで番組は終了。収録後、NHK紅白歌合戦の司会経験もある堀尾さんは「歌唱力ではなく、ステージから何かを伝えようという気持ちが愚直に伝わってくる。紅白の翌日の放送でそれが際立つから面白いのでは」と魅力を語り、今回の見どころもPRした。「見ないと一年がスタートしない思いで見てほしい。たぶんやみつきになると思う」
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