多忙の中で誕生したベストセラー

窪内さんは会社の意向を受けて次の連載小説を司馬さんに依頼した。
当時、司馬さんは10本以上の連載を抱え、多忙を極めていた。返事があったのは1カ月たってからだった。

「時期もテーマも未定やけど、書くわ」

そうして生まれたのが、「坂の上の雲」。
明治期に活躍した軍人らの群像劇を通して、日露戦争終結までの歴史を壮大なスケールで描いたベストセラーだ。

連載は43年4月にスタート。当時は日清、日露戦争の体験者が存命で、司馬さんは極力フィクションを排して史実にこだわり、退役軍人らへの取材に奔走した。
連載後に司馬さんは「くたくたになった。でも、この作品は残しておいてよかった」と話した。
https://www.sankei.com/article/20230103-B5LUNI6HDZODTJEQSJNMHL7DQQ/