国際政治のリスク分析を行う米調査会社「ユーラシア・グループ」は3日、今年の「10大リスク」をまとめた報告書を発表した。首位にウクライナ侵攻を続けるロシアを挙げ、「世界で最も危険なならず者国家になる」と指摘。核兵器による威嚇を強め、サイバー攻撃などを通じた「非対称戦争」に転じると予測している。

 報告書は、欧米の武器供与を受けたウクライナの防衛力を前に「(ロシアには)戦争に勝つための有力な軍事的な選択肢は残されていない」と指摘。欧米を不安定化させるため、ロシア系ハッカーによる政府や企業へのサイバー攻撃、インフラの破壊工作、偽情報の拡散を通じた選挙妨害などを強めると予測した。

 2位は、中国共産党総書記として異例の3期目に入った習近平国家主席を挙げた。権力集中を「極限」まで進める習氏にはチェック機能が働かず、「重大な間違い」を犯すリスクも高いと指摘。「現代の皇帝」が下す決定によってさまざまな弊害が生まれるとして、公衆衛生や経済、外交の3分野でリスクがあると説明した。

 3位は、人工知能(AI)などの技術革新による世界の混乱だった。ディープフェイクなどの進化で、「ほとんどの市民は、それが事実なのかウソなのか見分けられなくなる」と指摘。低コストで作り出された「人間」がソーシャルメディアで陰謀論や偽情報を拡散させ、民主主義を弱体化させると懸念を示した。

 ユーラシア・グループは、国際政治学者のイアン・ブレマー氏が社長を務める。昨年は中国の「ゼロコロナ」政策の失敗を首位に挙げ、経済の混乱などにつながると予測していた。【ニューヨーク隅俊之】

https://news.yahoo.co.jp/articles/706d6c5504cf583ed30e160e8ebb07693ef8edf6