https://cancer.qlife.jp/rarecancer/rare_feature/article19046.html

神経内分泌腫瘍の診断と治療―がんゲノム医療と内用療法(PRRT)がもたらす進歩―

神経内分泌腫瘍とは
 神経内分泌腫瘍「NEN(ネン):Neuroendocrine Neoplasm」は、全身にある神経内分泌細胞から発生する腫瘍です。神経内分泌細胞は、ホルモンやペプチド(アミノ酸が2個以上つながったもの)を分泌する細胞で、膵臓、消化管、肺などさまざまな臓器にあります。NENは消化器にできるものが約60%、肺や気管支にできるものが約30%とされています。消化器の中では、特に膵臓や直腸に多く発生します。罹患率は、年間10万人のうち、3~5人程度です。
さらに、NETは、ホルモンによる症状の有無で、「機能性NET」と「非機能性NET」に分類されます。機能性NETのうち、インスリンを分泌する膵β細胞から発生したNETを「インスリノーマ」といい、ガストリン産生細胞から発生したNETを「ガストリノーマ」といいます。
症状
 非機能性NETの場合は、ホルモンの作用による特徴的な症状はなく、腹痛や腹部膨満感などの症状が起こることがあります。

 機能性NETは、「インスリン」「ガストリン」「ソマトスタチン」などのホルモンを過剰に産出することがあり、これが原因でさまざまな症状が起こります。インスリンが過剰に分泌されると低血糖状態となり、冷や汗、動悸、意識障害などの症状が起こります。ガストリンが過剰に分泌されると胃液が過剰となり、胃・十二指腸潰瘍、慢性下痢、腹痛、胸焼け、体重減少などの症状が起こります。ソマトスタチンは、他のホルモンの働きを抑制する働きがあります。例えば、インスリンの分泌が抑制されることで、血糖値が高くなることがあり、体重減少や腹痛のほか、糖尿病、胆石症、脂肪便、下痢、貧血などの症状が起こります。

神経内分泌腫瘍の分類
 膵・消化管NETは、「部位」「進行度」「悪性度」「ホルモン症状の有無」「遺伝子疾患の有無」など、さまざまな観点から分類され、この分類は治療方針を決めるうえで考慮されます。

部位による分類
 NETは発生部位と発生学的な特徴により、「前腸」「中腸」「後腸」の3つに分類されます。前腸は、肺・気管支、胃・十二指腸、膵臓です。中腸は、小腸、虫垂、結腸(右半分)です。後腸は、結腸(左半分)と直腸です。

ステージ分類(TNM分類)
 がんのステージ分類は、原発腫瘍の大きさや浸潤の程度(T分類)、リンパ節への転移(N分類)、遠隔部位への転移(M分類)で決定されます。

T:原発腫瘍の大きさや浸潤の程度
N:リンパ節への転移
M:遠隔部位への転移
 ステージは1~4に分類されます。

膵NETのTNM分類
 NETのステージ分類は、「膵NET」と「消化管NET」でステージ分類が異なります。膵NETのステージ分類は、TNM分類で行われます。

T分類

TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
T1 膵内に限局し、最大径が2cm以下の腫瘍
T2 膵内に限局し、最大径が2cmを越えるが4cm以下の腫瘍
T3 膵内に限局し、最大径が4cmを越える腫瘍または十二指腸もしくは胆管に浸潤する腫瘍
T4 隣接する臓器(胃、脾、結腸、副腎)または大血管(腹腔動脈幹または上腸間膜動脈)の血管壁に浸潤する腫瘍