中国、化粧品も標的に[世界秩序の行方]第1部 攻防経済<2> 

 化粧品を対象とした中国政府の規制強化が波紋を呼んでいる。複数の関係者によると、当局は原料の全成分を今年4月末までに登録するよう企業に求め、完了しなければ中国での販売ができなくなるという。外国メーカーを標的に、組成情報の全面的開示を狙ったものと受けとめられている。

 中国政府は2020年に化粧品を管理する条例を約30年ぶりに改正し、条例に基づく管理規定を施行した。同規定では化粧品メーカーに対し、原料名や比率を明記した調合表の提出を義務づけ、原料メーカーにも成分比率の開示を求めている。今回の規制強化は、この完全実施を求めたものだ。

 化粧品の組成情報はメーカーが長年培ってきた企業秘密だ。開示すれば中国企業に情報が伝わり、同品質の化粧品が安価に生産される可能性が高い。日米仏などの主要メーカーからは、「中国市場の大きさを利用した、体のいい技術移転だ」と反発の声が上がる。

 経済成長に伴い、中国の化粧品市場は急拡大してきた。独立行政法人「製品評価技術基盤機構(NITE)」の資料によると、中国の市場規模は19年に約572億ドル(当時約6兆3000億円)に上り、米国に次ぐ世界2位となった。販路拡大を中国市場に求める外国メーカーは多い。日系化粧品企業幹部は「全成分登録をやりたくはないが、やらなければ市場に参入できない」と語る。

 中国は複合機などのオフィス機器を巡っても、設計や開発を含む全工程を中国国内で行うよう求める規制の導入に乗り出している。日本が高い技術を誇っていた新幹線や太陽光パネルなども中国に技術を奪われた。日本の化粧品業界団体は米欧の経済団体と連携し、中国当局に規制の再考を求める構えだ。

https://www.yomiuri.co.jp/world/20230103-OYT1T50148/