▽「地方では子どもを大学に進学させることが一番の出費」
 出産育児一時金の額は全国一律だが、出産は病気ではないため原則自由診療で、かかる費用は地域や医療機関によって大きく異なる。
 東京都のフリーランスの明日香さん(35)=仮名=は2021年、都内の有名病院で無痛分娩により長男(1)を出産した。夫婦ともに実家は遠方にある。新型コロナウイルス禍のため里帰りは諦め、自宅から近くて設備や体制が整った病院を希望した。
 出産育児一時金を超えて支払った自己負担分は約90万円。明日香さんは、安心のための必要経費だったと納得している。ただ、こうも思った。「一時金の増額はありがたいが、お金がかかるのは出産後だ」

 「もっと保育所に子どもを預けやすい社会にしてもらいたい。現状は保育所に入れるのはフルタイム勤務の母親が中心だ。パートやフリーランスでも入りやすくなるよう充実させてほしい」と訴えている。
 熊本市の会社員の真弥さん(37)=仮名=は2022年、個室で豪華な食事が付き、新生児集中治療室(NICU)もある病院で長男を出産した。自己負担は5千円で済んだ。出産育児一時金が増額されれば出産費用は全て賄え、数万円が余ることになる。
 それでも、真弥さんも財源を注いでほしいのは出産費用ではないと言う。「地方では、子どもを都会の大学に進学させることが一番の出費。出産時や子どもが小さい頃に比べ、高校や大学進学にかかる負担の方が大きい。県外の高校や大学に行けば、都会に住む家庭よりも費用がかさむ」