東京 6日 ロイター] - 厚生労働省が6日公表した2022年11月の毎月勤労統計(速報)によると、実質賃金は前年比3.8%低下と2014年5月以来8年6カ月ぶりの大幅なマイナスとなった。値上げの動きが広がる中、物価の上昇ペースに賃金の伸びが追いつかない状況が鮮明になった。

<製造業・運輸などボーナス減少>

実質賃金の減少は8カ月連続。11月はボーナスの落ち込みや消費者物価指数が前年比4.5%上昇したことが響いた。

労働者1人当たり平均の名目賃金を示す11月の現金給与総額は、前年比0.5%増の28万3895円。10月の同1.4%増からプラス幅が縮小した。

最大の要因はボーナスなど特別に支払われた給与が前年比19.2%減少したこと。10月は同2.9%増だった。11月は製造業、運輸・郵便業、教育・学習支援などの業種で大きく減少した。

所定内給与は前年比1.5%増の24万円9550円で、10月の同1.0%増と比べて伸びが拡大した。

一方、所定外給与は前年比5.2%増の1万9566円と10月の同7.7%増からプラス幅が縮小した。

実質賃金の落ち込みは景気の下押し要因になることから、政府は今年の春闘で企業に大幅な賃上げを呼び掛けており、5日に経済3団体の新年祝賀会に出席した岸田首相は「賃上げが追いつかなければ、スタグフレーションに陥ってしまうと警鐘を鳴らす専門家がいる」と語った。

経済界も前向きで、祝賀会後に会見した経団連の十倉雅和会長は「物価高に負けない賃上げを会員企業にお願いしている」と述べた。だが、全企業の99%以上を占める中小企業には負担が大きく、会見に同席した日本商工会議所の小林健会頭は、昨年賃上げした中小企業の7割は人材を引き止めるための「業績改善のない賃上げだった」と語った。

毎月勤労統計で用いられる消費者物価指数は、2020年基準の持ち家の帰属家賃を除くベース。携帯電話料金値下げの影響一巡で上昇率が3月の1.5%から4月に3.0%に大きく拡大した。以降、2%台後半から3%台半ばの範囲で推移し、10月は4.4%、11月は4.5%と上昇ピッチが加速している。
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