国内最古の「石棒」が出土 長さ33.3㎜ 何を象徴? 佐久市の香坂山遺跡
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023010600051

佐久市にある旧石器時代の香坂山遺跡で、
国内最古の3万7千~3万7500年前の石棒(せきぼう)1点が出土したことが5日、分かった。
確認した一人で明治大黒耀石(こくようせき)研究センター(小県郡長和町)の客員研究員、
堤隆さん(60)=佐久市=によると、石棒の出土は縄文時代中期以降の遺跡からが大半を占め、
旧石器時代は数例だけ。「旧石器時代の人類の精神世界を知る貴重な遺物」としている。

旧石器時代の石棒は、岩戸(いわど)遺跡(大分県)のおよそ2万8千年前のものや、
升形(ますがた)遺跡(千葉県)の推定3万年前のものなど数点しか見つかっていないという。

石棒は整った形で出土し、長さ33・3ミリ、幅13・8ミリ、厚さ11・9ミリ、重さ8グラム。
国内で発見された石棒の中では最小だ。結晶片岩製で、きらきらと光る雲母も含まれている。

香坂山遺跡の調査を続けている奈良文化財研究所(奈良市)の主任研究員、
国武貞克さん(47)が2021年に発掘した。
22年11月に佐久市内で開いた研究集会で石刃(せきじん)などとともに公開したところ、
堤さんが「石棒ではないか」と指摘。国武さんを含め、その場にいた研究者らの見解が一致した。

堤さんによると、香坂山遺跡では過去に国内最古の石刃も見つかっているが、黒色安山岩などで作られていた。
今回見つかった石棒は丸みを帯びており、石刃のような実用的な道具ではなく、
信仰目的などで作られたと考えられるという。

南佐久郡佐久穂町の有形文化財で国内最大の縄文時代の石棒
「北沢(きたさわ)の大(だい)石棒」は男性器をかたどり、
子孫繁栄などを祈る信仰の対象だったと考えられている。

堤さんは香坂山遺跡の石棒についても「目的や用途は分からないが、男性器をかたどったものではないか」と推測。
国武さんは「(雲母が)光っていることや形から、何らかの象徴的な形だと思う」と話している。

【香坂山遺跡】 
標高1100メートル超。2020年の調査で、国内最古となる旧石器時代の石刃群が出土した。
長さ10センチ以上の大型石刃、小型の小石刃、とがった形の尖頭形剥片(せんとうけいはくへん)があり
「3点セット」と呼ばれる。年代は、最新の研究で3万7千~3万7500年前と判明した。
3点セットは4万年以上前のものがユーラシア大陸でも見つかっており、
日本列島への現生人類の到達に関わる事例として注目を集めた。
21年の調査では石刃の製作場所や調理場跡と考えられる場所も見つかった。