伊勢湾や三河湾で海水に含まれるリンや窒素が減少し、漁業に深刻な影響を与えている。
最大の要因に指摘されるのは、生活や産業の排水規制の「効きすぎ」だ。愛知、三重両県は漁業者らの要望を受けて昨年十一月、約四十年ぶりに排水規制の緩和にかじを切った。(豊田直也)

 「四年連続でひどい色落ちだ。海苔(のり)屋が海苔を捨てるなんて切ない」。甘みの強い黒海苔の産地として知られる三重県鳥羽市の離島・菅島。
今季の収穫が始まった昨年十二月、漁師の木下和行さん(67)が苦い表情で海を眺めた。

 黒海苔が黒く色づかず、黄色っぽくなる「色落ち」。三重県水産研究所によると、原因は海苔や二枚貝の成長に必要なリンや窒素の減少だ。
色落ちした海苔は買い手が付かないため、処分せざるを得ないという。

 リンなどが減少した背景には、生活や産業の排水規制や下水処理技術の進歩がある。

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