欧州で新たな三島由紀夫ブーム 井上隆史・白百合女子大教授が寄稿

作家・三島由紀夫(1925~70)をめぐって、いま欧州で新しい動きがあるという。三島に関する多くの著作がある井上隆史・白百合女子大教授に寄稿してもらった。

ヨーロッパで新たな三島由紀夫ブームが起きている。地球人になりすました宇宙人同士の闘いを描く『美しい星』がはじめて英訳され、依頼を受けて危険な仕事を請け負う青年がアジアを舞台とする巨大犯罪に巻き込まれてゆく『命売ります』もここ数年でフランス語、英語、イタリア語に相次いで訳された。それらは、切腹した現代のサムライという紋切り型の三島像に収まりきらない前衛的なSF小説、あるいはスパイ小説のパロディとして、新鮮な驚きをもって迎えられている。

パリ中心地の文化施設イメージ・フォーラム(Forum des images)では、昨年10月から今月15日まで「日本・ミシマ・そして私」(Le Japon, Mishima et moi)が開催されている。

このイベントの特徴は、第一に「憂国」、「午後の曳航(えいこう)」や「三島由紀夫VS東大全共闘」など三島の原作映画や三島出演作だけでなく、三島が好んだ洋画、戦前・戦後の邦画、現代アニメからデジタルゲームに至るまで様々な映像作品が毎日のように上映、紹介され、文化史の大きな流れの中で三島の存在を体験できるようにプログラムが組まれていることである。

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