中村俊輔
「クラブはサッカーの技術論や方法論を教えてくれる。
高校の部活はどちらかというと精神論や人生論を学べる。
クラブの選手はサッカーをやるために集まっている集団なので、技術が優れていれば許されるところもあった。
私生活を口うるさく言われることはなかった時代だった。
部活はどんなに優秀な選手でも1時限目の授業に遅刻すれば叱られるし、
学校生活に問題があれば顧問以外の先生にも指摘される。
スポーツ推薦で入学した選手も生徒の一人なので、規律を乱す行為は絶対にダメ」

クラブユースと一線を画する部活動には明確な上下関係が存在する。
高校1年生は全体練習に混ざるどころかグラウンドの隅でボール拾いをするのが仕事だった。
昼休みには汚れたボールを磨き、雨が降った日はスポンジを使ってグラウンドに溜まった水を吸い取る。
試合出場はおろか練習すらできない、完全なる下積み時代を過ごしたというわけだ。

「マリノスのジュニアユースは人工芝のグラウンドで練習していたし、綺麗なボールに空気がしっかり入っていた。
みんながサッカーをやるために集まっていたから、先輩・後輩という意識はあっても、必要以上に上下関係はなかった。
だから高校サッカーの世界に足を踏み入れてみてカルチャーショックを受けた部分はある。
でも中学時代に一度犯した過ちを繰り返さないようにという思いが強かった」